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「決断から逃げる」赤字企業のダメリーダーの共通点

長谷川和廣(会社力研究所代表)

2018年10月15日 公開 2022年08月16日 更新

 

「ジャッジメント(判断)」と「デシジョン(決断)」の違いとは

たとえば、リーダーに必要なものとして、判断力と決断力といったものが挙げられます。リーダーという立場では、あらゆる場面で、「判断」や「決断」をしなければならないときが訪れるでしょう。

ですが、この2つには明確な違いがあるということをご存知でしょうか?

赤字額が20億円頬ある会社の再生をお手伝いしたときのことです。経営幹部の多くが「ジャッジメント(判断)」と「デシジョン(決断)」の違いを意識していないことに驚きました。

「ジャッジメント」とは、複数の選択肢のなかから最良な方法を論理的に導き出す行為です。

たとえば、製品のパッケージを決めるとき、デザインAの支持率が60%、デザインBの支持率が30%なら、デザインAのほうが受け入れられるという仮説を導き出す、といったことです。 

「デシジョン」とは、検討結果をもとにして、物事の優劣・良し悪しが、どちらにあるのかを選択する行為を意味します。

先の例で言えば、もし調査の結果、AとBの支持率が同じだったら、優劣を断定できません。この際、どちらを選択するかを決めるのがデシジョンです。

ジャッジメントにおいて求められるのは正確さであり、そのためには情報収集や検討に時間がかかる場合もあるでしょう。

一方、デシジョンに求められるのはスピードです。時間をかけても判断以上に正解に近づくことはないのだから、あとは決めるだけ。迷うのは時間の無駄なのです。

ところが、この赤字額が20億円ほどもある会社のリーダーたちは、まったく逆のことをしていました。ろくに情報収集もしないで憶測で判断を下して、いざ最終的な決断を迫ると、「もう少し検討させてください」と言って逃げてしまう。その会社が長い間、赤字にあえいでいたのも納得です。

ビジネスに求められるのは、的確なジャッジメントと迅速なデシジョンです。とくに現場のリーダーがこの2つを混同していると、指示を待っている実働部隊の社員たちは大迷惑です。
決断が遅いから対応が後手に回り、しかも判断が不正確なので失敗もクレームも多くなります。

リーダーシップを発揮してキヤノンの改革を成し遂げた御手洗冨士夫(みたらいふじお)名誉会長は私の尊敬する経営者の1人ですが、「熟慮断行(為すべきことをよく考えたうえで思いきって事を行うこと)」を座右の銘にしているといいます。

御手洗氏の父親は外科医で、手術の前に徹底的な検査で患部を調べて、いざメスを握ると迅速に処置をすることを心がけていたとか。御手洗氏は、その教えをビジネスに活かして成功を収めたのでしょう。

問題を深く分析することもなく、それでいて決断をだらだらと先送りするような人は、部下にとって最悪の上司です。
もし自分にその傾向があるようなら、いますぐ、意識を改めるべきでしょう。

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