<<50億円もの赤字を抱えていた企業の代表取締役に就任して1年目で営業利益を黒字化、これまでに2000社を超える企業の再生事業に参画して赤字会社の大半を立て直してきた会社再建のプロ、長谷川和廣氏。
同氏によると、赤字企業には、マーケティングの形を装ったエセ・マーケティングが多いそう。「自社のシェア」を理解した本質的なマーケティングとは?>>
※『利益を出すリーダーが必ずやっていること』(かんき出版)より一部を抜粋編集したものです。
自社のシェアを把握していないのは言語道断
みなさんは、自社の「シェア(市場占有率)」をしっかりと意識していますか? 何となくは知っていても、細かいところまでは把握していない、という人も多いかもしれません。
実際、赤字会社の再生で現場に入ると、シェアを重視していない社員が意外と多いことに驚かされます。ある化学メーカーのコンサルティングをしたときも、リーダークラスの社員が悪びれた様子もなくこう言っていました。
「正確なシェアは把握していません。競合他社と比較する前に、とにかく自社の売上を伸ばさなくては話にならないので……」
売上を最優先に考えるのは良いことですが、だからといって自社のシェアを把握していないのは言語道断です。
なぜシェアが大切なのか。それは、シェアはお客様から見た企業の通信簿であるからです。
業界最大手と呼ばれるのは、経常利益額がトップの企業ではなく、売上高がトップの企業です。経営者としては異論を挟みたくなるところですが、少なくても世間や一般の顧客はシェアの大きさで企業を評価しています(自動車やビール会社などがその好例)。
もちろん企業がシェアを争うのは、たんに名誉が欲しいからではありません。シェア1位の企業と2位の企業では、認知度に圧倒的な差が生じるからです。業界の市場規模が小さいほど、この傾向は顕著になります。
認知度の差はそのままブランド力の差になり、営業面や社員のモチベーションにも影響を与えます。だから企業はシェア争いに躍起になるのです。
また、シェアの奪い合いは、「手段を選ばず」のえげつない世界です。
たとえばM&Aで下位の企業を吸収したり、優良顧客を持っている営業マンを他社から引き抜いたり、はたまた掟破りの安売りでライバルから顧客を奪ったり。
逆に言うと、「シェア・ナンバーワン」という称号には、そういったえげつない努力をするだけのブランド価値があるといえます。
シェアには、たんに売上の大小を比べる以上の意味があるのです。