グループウェアの提供を通して企業の「働き方改革」推進を後押しするIT企業サイボウズ。「在宅勤務」「育児休暇」「副業」など、現在の時流に求められる企業のあり方を最前線で体現しており、同社から発信される情報に、各企業で変革を志す人々に強く支持されている。
そんなサイボウズにおいて、管理職=マネジャーはどんな姿を求めているのだろうか? 同社副代表の山田理氏の著書『最軽量のマネジメント』では、マネジャーの「役割」の本質を明快に描きつつ、誰もが疲れる「権威ごっこ」をやめることを唱えている。本稿ではその一節を紹介する。
※本稿は山田理著『最軽量のマネジメント』(ライツ社刊)より一部抜粋・編集したものです
サイボウズは人が人を管理することをあきらめた
サイボウズはグループウェアを提供する会社です。
グループウェアというのは、組織の中でやりとりされる情報、たとえば、スケジュール・顧客情報・メール・さらには企画書やExcelファイルまで、あらゆる情報をオンラインで手軽に共有するためのツールです。
つまり、より良いチームワークを生み出すサポートをするもの。ですから、企業理念にも「チームワークあふれる社会を創る」と掲げています。
そして、わたしたちが考える理想のチームワークとは、「企業理念に共感して集まったメンバーが、お互いの個性を尊重し合い、公明正大に議論して意思決定し、自立したそれぞれが互いに作用し、助け合いながら、最大限能力を発揮できること」です。
お互いの個性を尊重し合う、ということは、それぞれの働きやすさを尊重する、ということ。それならまずは、サイボウズ自体がやるべきだ、と。
その結果、「100人100通りの働き方」を合言葉に、サイボウズではさまざまな働き方を実現してきました。
・育休は最長6年
・育自分休暇制度…35歳以下は、退職後6年間出戻りOK
・複(副)業自由…会社資産と関係ないものは承認や報告の義務もない
・複業採用…サイボウズ側の仕事を複(副)業とする人向けの採用方式
・働き方宣言制度…いつ、どこで、どれくらい働くのか、は個人の自由記述式
サイボウズでは副業を「複業」と表現しています。
従来の副業は、副収入を得るための「サブ」的な意味合いが強いものでしたが、サイボウズが考える「複業」は自分らしい個性的なキャリアを積むための「パラレル」、つまり並列なものです。
また、サイボウズの働き方は、もはや選択制ですらありません。「いつ、どこで、どれくらい働くのか、自分の希望する働き方を自由記述で宣言」します。
在宅で朝7時から働く人もいれば、基本は地方在住で週に2日リモート勤務する人、9時出社するけれど途中複業で抜けて夕方に戻ってくる人もいます。まさに「100人100通りの働き方」です。
こうなると、もはや管理のしようなんて、ありませんよね。
「100人100通りの働き方」を目指した時点で、サイボウズは社員を管理することはあきらめたのです。
そして当然、ここからサイボウズにおいてマネジャーに期待される役割は変わっていきました。
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社長が放った一言「もう、『部長』って古くない?」