"勝つ弁護士"が選んだ「敗訴を受け入れる」という戦略
2018年10月24日 公開 2019年10月30日 更新
負けを受け入れることが、最良の選択になることもある
ふと、若手弁護士の所内研修用ビデオ(「アメリカでの裁判対応に失敗した日本企業」)に気がついた。映像はやはりインパクトがある。それを持参しよう。
顧客の本社で50代初めと見える社長と名刺を交わしたとき、即断即決型のタイプだと直感した。初めからビデオを見てもらった方がよさそうだ。
社長、役員全員が30分のビデオを見た後は、何の説明も要らなかった。
「分かりました。控訴はやめます」。社長の即決だった。
これは、わたし自身にとっては、仕事を断るに等しい自殺行為だった。控訴してもらえば、報酬2000万円は固かったろう。
しかし、顧客の本当の利益にはならない。
顧客は、この件でわたしを信頼してくれたらしい。その後20数年が経ち、社長は4代交替し、当時の役員も全員が代わったが、わたしはまだこの会社の仕事を続けている。