CAの仰天アナウンスが熊本の航空会社を救った―天草エアライン危機突破の物語
2018年08月13日 公開 2019年04月03日 更新
<<創業以来赤字続き、4年目に存亡の危機に立たされるも、見事に危機を乗り越えた熊本県の航空会社「天草エアライン」。
この天草エアラインをテーマにした全員実名の小説『島のエアライン』(毎日新聞出版)を6月に上梓された黒木亮氏と、健康社会学者の河合薫さんの対談が先日行われました。
河合さんは元全日空のCA(キャビンアテンダント)で、近著『残念な職場』(PHP新書)の中で天草エアラインの取り組みを紹介されました。対談の一部をここにご紹介します>>
空港を造るところからはじまった
黒木 裁判官をテーマにした小説『法服の王国』を書いたときに、天草を訪れたんです。天草出身の知人に天草への行き方を尋ねたら、天草エアラインというものがあると。
「どうやって予約したらいいの?」と尋ねたら「いや、予約なんかしなくていいですよ。5人以上乗っているの見たことないですから」と失礼なことを言っていて(笑)。実際は10人くらい搭乗していましたが。
福岡からの景色がすばらしくて、まるで遊覧飛行のよう。わずか1万円ほどでこんなフライトができるとは、とびっくりしました。
一方で、CAはポロシャツを着た若い女性で、天草空港の男女の職員は背の高さも年齢もばらばら。羽田空港の若い女性が中心で一種統一性がある大手航空会社のカウンターとはずいぶん違った印象でした。
一瞬、「天草エアラインは市役所が運営しているのか」などと思ってしまいました(笑)。
当時一日10便とのことで、じゃあ少なくとも2機は持っているんだと思っていましたが、1機で運営していました。
それは今も変わりません。そもそも、天草エアラインは新たに空港を造るところからスタートしているんですね。10万人足らずの自治体で、「天草空港」の建設から始めている。
そうしたことを知って、これは小説になるんじゃないかと思ったんです。
その時、ふと『島のエアライン』というタイトルが頭に思い浮かんで、「これはいいタイトルだな」と。
小説家なので、いつも30くらいテーマを考えていますが、実際に執筆するのは読者に興味を持ってもらえそうないいタイトルが思いついたときです。
さらに、本に説得力を持たせるために、全員実名にしました。
これまで、「黒木さんの小説は実名の人物と架空の人物が入り混じっていて、小説なのかノンフィクションかわかりづらい」などと言われていたので(笑)、今回ははっきりとオール実名で勝負だ、という感じです。