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人はなぜ「時間がない!」と感じてしまうのか?

水島広子(精神科医)

2018年12月18日 公開 2023年09月05日 更新

 

「足りないところ探し」という現代病

 こうした「焦りグセ」は、どのような人がなりやすいのでしょうか。

 焦りグセのある人に共通するのは、「完璧主義」なことです。物事には完璧があると思っていて、それと比べて自分に「足りないところ」を探すから、「あれもやらなければ、これもやらなければ」という感覚に陥ってしまうのです。人間は完璧ではありませんから、「足りないところ」を探し始めたらきりがありませんし、いつまでたっても自分が思う「完璧」には到達しません。私はこれを「自虐的完璧主義」と呼んでいます。

 この「足りないところ探し」は、他人との比較から生じることが多いものです。特にSNSを通して周りの人とつながろうとする現代人は、他人との比較に陥りやすいと言えます。

 SNSでは、「こんな趣味を楽しんでいる」「こんな資格を取った」など、様々な“リア充”アピールが発信されています。こうした投稿を目にして、「自分は何もしていない、このままではダメだ」と衝撃を受け、「自分も趣味を持たなきゃ」「資格を取らなきゃ」と焦ってしまうのです。その趣味や資格が自分にとって必要なのか、という視点は置き去りのまま。発信者に都合よく情報を“盛れる”SNSは焦りグセを生み出す大きな要因になっているのです。

 また、40代という年代は、焦りグセに陥りやすい年代と言えます。40代は「人生の折り返し」を意識し、仕事でもプライベートでも残りの人生のことを考えたり、やり残したことに挑戦する最後のチャンスと感じたりする年代でもあります。

 しかも、このくらいになると、身近なところでも、仕事やプライベートで差が生まれてきます。管理職になった人、転職に成功した人、結婚している人・いない人、子供がいる人・いない人など多種多様で、それぞれ良い悪いがあるのに、つい他人の良い部分にばかり目がいき、「足りないところ探し」を始めてしまう。

 仕事も家庭もすべてを完璧に成し遂げられる人などいないのに、身近な人の中に「自分にないもの」を見つけてしまうと、「なんで自分はできていないんだ」「自分の人生、このままでいいのだろうか」と焦りをより加速させてしまうのです。

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著者紹介

水島広子(みずしま・ひろこ)

精神科医

慶應義塾大学医学部卒業、同大学院修了(医学博士)。慶應義塾大学医学部精神神経科勤務を経て、現在、対人関係療法専門クリニック院長。慶應義塾大学医学部非常勤講師。2000~05 年、衆議院議員として児童虐待防止法の抜本改正をはじめ、数々の法案の修正に尽力。『焦りグセがなくなる本』(PHP文庫)をはじめ、著書多数。

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