人間関係がうまくいく人は、心を読む能力が高い。心理学者の内藤誼人さんは、著書『10秒で本音を見抜く心理術』にて過去の研究結果をもとに、人の心を読むことのメリットを解説しています。
苦手な人との付き合いも、相手の心理を理解することでストレスが和らぐといいます。本稿では同書より、苦手な人とは距離を縮めたほうがうまくいく理由をご紹介します。
※本稿は、内藤誼人著『10秒で本音を見抜く心理術』(PHP文庫)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
苦手な相手ほど、距離を縮めるとうまくいく
学生時代なら、気の合う人とだけお付き合いし、嫌いな人は完全に無視していても問題はありませんが、社会人になるとそうは言っていられません。たとえイヤな人でも、同じ職場で働く以上、どうしてもお付き合いしなければならないからです。
では、どうすれば嫌いな人への苦手意識を克服できるのでしょうか。そのための方法は、逆説的なことながら、自分から積極的にどんどん相手に近づいていくのがベストです。相手の近くにいれば、イヤでも相手の姿が視界に入ります。
嫌いな人が視界に入ってくるのは、最初は苦痛でしょう。気分も悪くなるかもしれません。しかし、そんな人でさえ、何日も何週間も見ていると、次第に慣れてきます。嫌いな人でも、そのうち慣れてきて、「どうということはない」と感じるようになります。
近くにいれば、少しは雑談をする機会も増えます。そういう接触をくり返すうちに、「なんだ、顔が怖いと思っていたけど、慣れてくるとそんなに怖い人でもないのだな」ということに気づくこともできます。知らないうちに苦手意識も克服できてしまうわけです。
オランダにあるラドバウド大学のイヴォンヌ・ファン・デン・ベルグは、10歳から12歳までの651名の子どもに、クラスメートで好きな人と嫌いな人の名前を書いてもらいました。次に、席替えをして、お互いに嫌いな子ども同士の座席を近くにしました。それから数週間後、クラスメートに対する好き嫌いをもう一度教えてもらったところ、最初は嫌いだった子に対する好意度がアップすることがわかりました。
人は、接触回数が増えるほど好意を持ちやすい
ムリに話しかけようとしなくとも、ただ近くにいるという、それだけの理由で私たちはその相手に好意を感じるようになるのです。嫌いだからといって、その人から逃げ回っているだけでは、苦手意識や嫌悪感は減少しません。いつまでも嫌いなままです。
ところが、会社の飲み会では、あえて嫌いな人の隣に座ってみるとか、毎朝、きちんと挨拶だけはしてみるとか、そういうちょっとした心がけをつづけていれば、いつの間にか苦手意識も克服されているはずです。
アメリカ合衆国の「建国の父」と呼ばれたベンジャミン・フランクリン(100ドル紙幣に描かれている人です)は、相当に人当たりのいい人物でしたが、そんなフランクリンのことを嫌いな人もいました。フランクリンは自分を嫌っているような人とも友達になりたがる人でしたから、自分から相手に近づいて話しかけました。するとどうでしょう、向こうもフランクリンに対する態度を軟化させてくれて、一生つづく友好関係を築くことができたそうです。
嫌いな人から逃げていても解決にはなりません。どんどん積極的に話しかけることが大切なのです。
自分の気持ちから他人の気持ちも推察できる
相手の気持ちを知りたいのなら、相手に対して自分がどのような気持ちなのかを考えてみるとよいでしょう。私たちが相手に抱く気持ちは、一方通行ということはありません。私たちが相手を好ましく思っているのなら、同じように相手もこちらに対して好ましい印象を持っているものです。
「私はあなたが好き」と思うのなら、「相手もあなたを好き」と判断してもそんなに大きくは外れないでしょうし、「この手のタイプって本当に苦手なんだよ」と心の中で思っているのなら、おそらくは「相手もあなたが苦手」と考えているはずです。
自分の感情は、相手にも伝わっている
米ノースイースタン大学のジュディス・ホールは、44名のお医者さんと、受け持っている患者さん261名に、どれくらい相手を好きなのかを聞きました。すると両者の間には、正の比例関係が見られました。患者さんがお医者さんを好きなら、お医者さんも患者さんに好意を持っていることが明らかにされたのです。
ホールによりますと、お医者さんが受け持ちの患者に好意を抱いていると、患者もお医者さんのことを好きになり、1年後にもう一度調べてみると、そういう患者ほど、お医者さんに対する満足度も高く、「他のお医者さんに変えたい」という気持ちを持たなくなることもわかりました。
というわけで、もし相手の気持ちを知りたいのなら、まずは自分自身が相手をどう思っているのかを問いかけてみればよいのです。相手を憎からず思っているのなら、相手もこちらをそう思ってくれていると判断できます。他人の気持ちはわからなくとも、さすがに自分の気持ちはわかりますよね。何しろ、自分のことなのですから。
したがって、「どうもこの人はあまり表情も変えないし、何を考えているのか、よくわからない」というときには、自分の気持ちで判断すればよいのです。職場の人たちに、自分がどう思われているのかを知りたいのなら、それぞれの人に対して、自分がその人をどう思っているのかを考えてみましょう。
「Aさんは好き」「Bさんは苦手」「Cさんはどうでもいい」
そんなふうに自分が思っているのなら、おそらくはAさんには好かれており、Bさんには少し嫌われており、Cさんからは何とも思われていない、という結果になると思います。
私たちは、好きな人に対してはにこやかな表情で接するものです。そういう態度は、相手にもきちんと伝わります。そのため、相手もこちらに好ましい印象を抱くようになるのです。同じように、嫌いな人に対しては、知らないうちに嫌悪の表情を見せてしまったり、トゲのある声になってしまったりします。相手はそういう態度に反応し、こちらを嫌いになるのです。









