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記憶力が衰えても"物忘れ"をしない人

2019年01月24日 公開

増本康平(神戸大学大学院准教授)

 

ITはむしろ高齢者の味方をする

また、物忘れへの対処が大切なのは、高齢者に限りません。

たとえば家族が言うには、私は記憶に問題があるようです。話を聞いていないし、聞いていたようにみえても後で確認すると覚えていないし、まるで思い出を共有できていないと言われることもあります。

加えると、日々の予定も正確に把握していませんし、仕事の情報も覚えているかというと、それほど自信がありません。

私は自分の記憶をそれほど信用しておらず、会議の日時や約束のスケジュール、論文の執筆に必要な情報など、正確性が求められる情報ほど記憶に頼ることをやめています。

2011年に「グーグルエフェクト」と呼ばれる、記憶に関する現象が、科学雑誌の『Science』に発表されました。

インターネットの検索エンジンの名前がつけられたこの現象は、インターネットの普及により、いつでも、どこでも情報を入手することができるようになった結果、私たちは情報を記憶するのではなく、信頼できる情報をどこにいけば入手でき、入手した情報をデバイスのどこに保存したのかといった、別の情報を記憶するようになったというものです。

グーグルエフェクトは、大切な情報を現代人が記憶しなくなったと、ネガティブに解釈されることもあります。しかし、私はそうは思いません。

私が大学院に進学した当時は、論文は図書館に行き、印刷して読んでいました。今は、インターネットで検索して論文をダウンロードすれば、いつでもどこでも読めます。

さらに、紙の論文では重要な記述がどの論文に記載されていたのかを覚えたり、線を引いたり、パソコンに打ち直したりして、まとめる必要がありました。

現在では、ファイルの中を検索することで、たとえば「記憶」に関する記述をすぐに探せます。

そしてこれを使いこなせるかどうかは、研究者のパフォーマンスに影響しますし、研究でなくても、たくさんの情報を扱う仕事の効率性に大きな影響を与えるはずです。

このようなスキルの学習は手続き記憶でも述べたように、高齢期において維持される記憶です。認知症の方でも初期であれば、タブレットの使用方法を学ぶことはできます。

インターネットが急速に広がり、携帯可能なデバイス(スマートフォンやタブレット)でいつでも必要な情報が得られるようになったことで、私たちは記憶に制限されずに情報を扱えるようになりました。

そして、この変化は全年代群の中でも記憶機能が低下する高齢者に特にメリットをもたらすはずです。

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