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仕事

「承認欲求が強すぎて孤立する人」に教えてあげるべき"仕事のWHY"

清水久三子(アンド・クリエイト代表)

2019年02月19日 公開

ひたすらレンガを積む意味とは?

ある旅人が街を歩いていると、1人の男が道の脇で難しそうな顔をしながらレンガを積んでいました。旅人は、その男のそばに立ち止まってたずねました。

「ここでいったい何をしているのですか?」

すると、男はこう答えました。

「見ればわかるだろう。レンガ積みをしているのさ。毎日毎日、雨の日も強い風の日も、暑い日も寒い日も1日中レンガ積みだ。なんでオレはこんなことをしなければならないのか、全くついてない」

旅人は、その男に「大変ですね」となぐさめの言葉を残して歩き続けました。

しばらく行くと、一生懸命レンガを積んでいる別の男に出会いました。そこで、また旅人は「ここでいったい何をしているのですか?」とたずねたところ、男はこう答えました。

「オレはね、ここで大きな壁をつくっているんだよ。これがオレの仕事でね。この仕事でオレは家族を養ってるんだ。この仕事があるから家族全員が食べていけるのだから、大変だなんて言ったらバチが当たるよ」

旅人は、その男に励ましの言葉を残して歩き続けました。

さらにもう少し歩くと、別の男がイキイキと楽しそうにレンガを積んでいました。旅人は興味深く「ここでいったい何をしているのですか?」と尋ねました。すると男は目を輝かせてこう答えました。

「ああ、オレたちのことかい? オレたちは歴史に残る偉大な大聖堂をつくっているんだ。ここで多くの人が祝福を受け、悲しみを払うんだぜ! 素晴らしいだろう!」

旅人は、その男にお礼の言葉を残して、元気いっぱいに歩き始めました。
 

やらされ仕事ではなく意義を明確に

いかがでしょう。このように、WHYの違いで、現在や将来に差が生まれます。

1人目にはそもそもWHYがありません。そこにあるのは「やらされている」という意識だけ。5年後や10年後も、きっと同じことをしているでしょう。

2人目のWHYは「生活費を稼ぎたいから」。これがいけないわけではありませんが、動機がこれだけだとすると将来は不透明です。5年後や10年後は、家族や生活のためにもっと稼ぎのいい仕事を……、と考えて森林破壊につながるような仕事をしているかもしれません。

3人目のWHYは「人を救う建物をつくることで世の中に貢献したいから」です。こう考えて働くと気づきも得られるものも大きいですし、その後なし得るものも素晴らしいものになる可能性が高いでしょう。5年後や10年後は、設計の勉強をして建築家になろうとしているかもしれません。

本当に残念なのは1人目です。WHYがないということは「主体性がない」とイコールです。主体性がなければ色々なものに流され、気がつけば不本意なところにたどり着くことになってしまいます。

さらに言えば、3人目のWHYは多くの人が賛同するでしょう。結果として応援が集まり、ますます成功への好循環が回るようになります。2人目のWHYが家族のためでもなく、とにかく稼ぐためだった場合にはあまり賛同を得られることはないでしょう。

このように正しいWHYには人が集まり、正しくないWHYからは人が離れて孤独になっていくのです。

みなさんも、PDCAを回す前にまずWHYを考えてください。すぐに思いつかないという場合には、普段の仕事や生活で自分がどんな状態だと心地よいか、楽しいか、やりがいを感じるのか思い出してみましょう。それが自分の中のWHYを明確にすることの助けになります。

何か迷いが生じたときには、このWHYに立ち戻ることで、他の人との無意味な比較や承認欲求に振り回されることがなくなり、色々な仕事や出来事に多くの気づきを見出すことが増え、楽しくなってくるでしょう。

このWHYを明確に持つか持たないかで、PDCAの質が大きく変わるのです。

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