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欧米で議論沸騰の「2045年問題」 コンピュータと人類の主従関係が逆転する

冨島佑允(とみしまゆうすけ)

2019年06月06日 公開 2019年06月19日 更新

文明は急速に進歩する?!

進歩が指数関数に従うという考え方自体はカーツワイルの専売特許ではなく、古くからあるものです。もともとコンピューターの世界では、コンピューターの進歩が「ムーアの法則」に従うと考えられてきました。

ムーアの法則とは、コンピューターの能力(ある小さな範囲に集積できるトランジスタの個数)がおよそ2年で2倍になっていくというものです。

2年で2倍という進歩はすさまじいもので、そのまま素直に当てはめると、40年間で約100万倍の差が付きます。カーツワイルは、コンピューターの世界で広く知られている「ムーアの法則」からヒントを得て、より一般的に文明全体の進歩も指数関数に従うと考えたのです。

 

シンギュラリティの次はバーチャル宇宙人?

それでは、シンギュラリティの「次」には何が来るのでしょうか?欧米では一部で気の早い人たちが議論を進めています。コンピューターの性能が極限まで高まった結果、人類は世界そのものをコンピューターで再現する。

そして仮想世界に自我を持つ人間を誕生させるというのです。その目的は、過去の時代をコンピューター上で再現することにより、自分たち自身をより深く知ることであったり、単なる娯楽であったりと様々に考えられています。

まるでSFのようだと感じるでしょうか?けれどもこれは、歴史の必然です。人間の自我すらコンピューター上でシミュレーションできるようになった時、人々は、それをどうやって社会に役立てようとするでしょうか?ボストロム教授は、主な用途は歴史研究だろうと述べています。

過去の歴史を再現したシミュレーションを繰り返し実行することで、自分たちは何者なのかを探るのです。

けれどもシミュレーション技術の主な用途は歴史研究だけでしょうか。むしろビジネスにおいて活用の場があるでしょう。

人間の創造性には限界があり、人間が造ったAIにも、同じく限界があります。いくら革新的な技術、アイデア、芸術などを生み出そうとしても、過去を参考にする限り、真に革新的なものを生むのは至難の業でしょう。

圧倒的に独自性の高いコンテンツを生み出すにはどうすれば良いか?究極的には、私たちの文化とは全く無縁の存在、例えば宇宙人から物事を学べれば一番効率的です。現代ではそんなことは不可能ですが、仮想現実が自在に生み出せる未来社会では、宇宙人ですらシミュレーションで造ってしまうことが可能になるかもしれません。

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1000年間の歴史をたったの1秒で計算できる

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