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「宗教は非科学的」では見えない“近い将来のコンピュータの姿"

2019年06月18日 公開

冨島佑允(とみしまゆうすけ)

AIの次にあるものは?

<<「神は死んだ」と言ったのはフリードリヒ・ニーチェ。科学技術の進歩とともに、人々の宗教心は徐々に薄れてきている。科学への確信が、宗教が担っていた絶対的な神にとって代わる、と主張する人も多い。

ところが最先端物理学の世界では、それとは真逆の可能性が提唱されている。気鋭の哲学者ニック・ボストロムは、AIが人間の知能を超えるシンギュラリティの後には、コンピューター上に人間社会が再現され、社会実験のモルモットとなる時代が必ず来ると予言している。

さらに考えを進めていくと、そこから読み解けたのは「我々人類が誰かのシミュレーションにすぎないのではないか」という仮説だった。AIの進化にある先には、宗教心に回帰した人間の姿かもしれない。京都大学物理学専攻で、最先端の物理学や科学理論に詳しい著者が、シンギュラリティ以後の世界を解き明かす。>>

※本稿は冨島佑允著『この世界は誰が創造したのか: シミュレーション仮説入門』(河出書房新社刊)より一部抜粋・編集したものです。

 

AIはシミュレーションの世界を到来させる

現在、ITの世界で活発に議論されているテーマのひとつがシンギュラリティです。シンギュラリティとは、人工知能の性能が急激に向上することで、人間に代わって社会を管理するようになる時点のことを指します。

もともと「シンギュラリティ」という言葉は数学から来ていて、他とは異なる特別な点(特異点)のことを指します。私たち人類の歴史は、それだけ特別な時期に差し掛かろうとしているのです。

未来学者であり、「シンギュラリティ」という言葉の発明者でもあるレイ・カーツワイルは、その到来を2045年と予言しています。オックスフォード大学で哲学の教鞭をとるニック・ボストロム教授によると、そのときにキーとなる技術は「再帰的自己改良プログラム」です。

これは、自力で試行錯誤を繰り返して学習し、自分で自分のソースコードを改善していくAIのことを指します。このようなAIの登場によって進歩が爆発的に加速し、シンギュラリティがもたらされるというのです。

カーツワイルが拠り所としているのは「収穫加速の法則」。彼は人類の歴史を検証し、文明の進歩は指数関数に従うと唱えました。

指数関数とは、最初はゆっくり変化するものの徐々に勢いが増していき、やがて爆発的に増加していく関数のことを指します。文明の進歩も同様に、原始時代から中世頃までは比較的ゆっくりと発展してきましたが、産業革命以降は進歩が急激に加速しています。

カーツワイルは人工知能の研究者ですが、もともとコンピューターの世界では、「ムーアの法則」というものが知られていました。ムーアの法則とは、コンピューターの能力(ある小さな範囲に集積できるトランジスタの個数)がおよそ2年で2倍になっていくというものです。

この法則を当てはめると、コンピューターは40年間で約100万倍もパワーアップしてきたことになります。カーツワイルはこの法則からヒントを得て、より一般的に文明全体の進歩も指数関数に従い、近いうちに爆発的な進歩の時を迎えると結論付けたのです。

 

私たちは100%シミュレーション?!

シンギュライティを迎え究極の技術発展が出現したら、その先には何があるのでしょうか?ニック・ボストロム教授やテスラモーターズのイーロン・マスクCEOは、情報技術を自在に駆使する未来人が、世界そのものをコンピューター・シミュレーションとして再現するだろうと予測しています。

それほどの技術文明を手にした者達は、もはや人間を超えて創造神の領域に足を踏み入れるため、「ポストヒューマン(人間を超える者)」と呼ばれています。

シミュレーションを実行する目的は、過去の歴史を検証することであったり、社会心理学的な実験であったりと様々でしょう。1つ言えるのは、そのようなシミュレーションはたった一度だけ実行されるのではなく、色々な目的で無数のシミュレーション世界が生み出されるだろうということです。

ボストロム教授は、むしろ私達こそがシミュレーションなのだと語ります。何故ならば、ポストヒューマンが様々な理由で無数のシミュレーションを実行するならば、シミュレーション世界の人口が現実世界の人口を圧倒するからです。

単純に人口比で考えると、私達はシミュレーション世界の住人である可能性が圧倒的に高いということになります。このような話は「シミュレーション仮説」として知られていて、まじめに議論されている哲学のテーマです。このことから何が分かるのか?シンギュラリティを迎えて科学が極限まで発達しても、私達は宗教を捨てられないという事実です。

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