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善意がパワハラに? “ハラスメント地雷”を避けるための「話し方」

田中ちひろ(ヒューマンスキルアカデミー代表)、舘野聡子(社労士)

2019年06月26日 公開 2022年06月14日 更新

 

部下の部署異動、担当替えがパワハラ扱いに!?

もうひとつの事例です。今度は30代後半の男性、Bさん。
「これは陰謀だ! パワハラだ!!」とものすごい剣幕で相談に来られました。話を聞くと、異動により来月から勤務地が変わると言います。

それのどこがパワハラなのかと聞くと

「今勤務している営業所は通勤に30分位しかかからないところなのですが、辞令が出て来月から通勤に1時間以上もかかる営業所に移ることになりました。

上司に理由を聞くと『新天地でさらに経験を積んで欲しいという会社の期待の表れだ』と言います。でも通勤時間が長くなれば、それだけ仕事のパフォーマンスが落ちる。それを知っていて上司は裏で手を回したんです。

僕が何度か飲み会の誘いを断ったのが気に入らないんだと薄々感じてはいましたよ。でもこんな手を使うなんて、これは立派なパワハラです!!」

と、どんどんヒートアップしていきます。

BさんもAさん同様、丁寧に話を聞くことで、気持ちを落ち着けてもらい、最終的には「少し思い込みが強すぎた」と帰っていかれました。ですがやはり通勤時間が延びることに納得がいかない様子はありありと伝わってきました。

 

コミュニケーションのとり方次第で「善意」が「パワハラ」に!?

いまお話しした事例は少し極端かもしれませんが、ハラスメント問題を考えるうえでの真理を含んでいます。真理とは繰り返しますが、「ハラスメントの問題のほとんどはコミュニケーションの問題である」ということです。

Aさんの事例で言えば、パワハラと言われた先輩に事情を聞いたところ「彼女にとって大切なプレゼンの締め切りだったので、なんとしてもうまくやってほしいと思って、つい何度も念を押した。まさか『私が信用していない』と思っているなんて想像もしていなかったです」と、驚きを隠せない様子でした。

一方のBさんはどうでしょうか。異動を伝えたという上司の方に話を聞くと「あくまで組織としての“人事異動”で、それ以上でもそれ以下でもない」というシンプルな回答。ただ、「いま思えば少し言葉が少なかったかもしれない」という反省の言葉ももらいました。

Bさんの上司はご自身のコミュニケーションのとり方に意識を向けられましたが、まさに問題の本質に気がついてくださったとホッとしたのを覚えています。

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ますます増える「自分は認められていない→ハラスメント」という流れ

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