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善意がパワハラに? “ハラスメント地雷”を避けるための「話し方」

田中ちひろ(ヒューマンスキルアカデミー代表)、舘野聡子(社労士)

2019年06月26日 公開 2022年06月14日 更新

 

ますます増える「自分は認められていない→ハラスメント」という流れ

ハラスメント=コミュニケーションのギャップと考えた場合、見落とせないポイントがあります。コミュニケーションがうまくいかないときは、誰でもハラスメントの被害者、そして加害者になり得るということです。

特に立場が違う場合、もっと言うと双方に上下関係がある場合は要注意です。AさんもBさんも上下で言うと下の立場でした。その立場の弱さが、無意識のうちに自らを被害者にしてしまい、上司からしたら他意のない言動がパワハラに受け取られました。

たとえば、Aさんの事例で言えば、もしこれが同僚同士で起こっていたら、Aさんは相手に「なぜ、そんなことを何度も聞くの?」と尋ねることで問題は解決していたかもしれません。

またAさんBさんともにコミュニケーションの問題を「自分は認められていない」というふうに解釈しています。そして相手の言動の他の可能性を考える前に、傷つき、怒りを感じ、ゆえにそれらを「パワハラ」と位置付けてしまったのです。

 

ハラスメントを起こさない話し方、聞き方

いつ自分がハラスメントの加害者として訴えられるかわからないと言うと、部下に対して命令はおろか指示ですら怖くて出せないという声をよく聞きます。

でもハラスメントの多くが、聞く側が「自分は認められていない」と解釈するところから始まるとすれば、その防ぎ方はかなり明確になるのではないでしょうか?

要するに、相手を認めていることを伝えればいいのです。相手にとって聞きたくないことを伝えなければならないときはなおさらです。

「あなたのことは(人として)認めている、応援している、心配している」ときちんと伝えてから、でもこの行動は変えてほしい、期限は守ってほしい、通勤時間が遠くなるが人事異動だ、ということを「あなた自身」とは切り離して伝えるのです。

一方で、最近、聞く側の承認欲求はどうやらどんどん強くなってきているようです。SNSで「いいね」を求めて投稿して育った時代の人々が今後ももっと増えていきます。

そんななかで、もしかしたら「厳しくする=愛情表現」という構図も言葉にして伝えないと「厳しくする=いじめ」と取られてしまうかもしれません。

ハラスメントに関する法制化が進むなか、ハラスメントが起きて幸せになる人は一人もいません。特に部下を持つ上司は、上下関係があるだけに、今以上に部下とのコミュニケーションに気を配る必要が出てくるでしょう。

たとえば、「軽い気持ちで部下に仕事の手伝いをお願いした」「同行営業の後部下をお茶に誘った」、あるいは「考課の際(部下の」思い描いていた評価をつけなかった」といったことでパワハラ、セクハラと訴えられる可能性だってゼロではないのです。どこに地雷が潜んでいるのか、わからないのが現代です。

なので、まずは、ハラスメントの加害者にならないために、正しい話し方を身につけることが大切です。そのために、まずは「相手を認めていることをつねに言葉にして伝える」ことから始めてみてください。

そしてその一方で、ハラスメントの問題は、皆が正しい聞き方を身につけることも絶対に必要です。話す側がどれだけ気を付けても、聞く側が「傷つきやすい聞き方のクセ」を持っているとハラスメントに発展してしまう可能性があるからです。

例えば「行動」を指摘されただけなのに「自分は認められていない」と解釈しないよう、相手が何を伝えたいのか、そこを冷静に考えて聞くようにしてみてください。

まずは相手をしっかり認める、そして自分自身もきちんと認める――その点を意識したコミュニケーションを心がけてみましょう。

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