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社会

娘の家の合鍵を勝手に作り“侵入”…子を悩ませる「母親の支配欲」

片田珠美(精神科医)

2019年07月24日 公開 2023年01月11日 更新

 

一人暮らしの家に、いるはずのない母親が突然現れる

似たような話を、一人で暮らしている20代の会社員の女性からも聞いたことがある。

「先週、久しぶりに有休を取って家でゆっくりしてたんですね。ちょっと朝寝坊して、朝風呂に入って出てきたら、母がいたんです。びっくりしました。

母がお節介ということは子どもの頃からよくわかっているので、合い鍵は渡していなかったのですが、私が実家に帰ったときに、私のバッグから鍵を勝手に取り出して合い鍵を作ったみたいです。

私が今まで知らなかっただけで、これまでも私が会社に行っている間に、合い鍵で勝手に開けて入っていたみたいなんですね。私が『お母さん、なんでこんなところにいるの!』と、ちょっと怒って言ったら、『あんたこそ、平日で会社があるはずなのに、どうして家で休んでいるの』と逆に叱られました」

この母親も、娘のマンションに勝手に入ったことに後ろめたさも罪悪感も抱いていないようだ。

むしろ、一人暮らしをしている娘の安全を守るために、ときどきこっそりと入って監視するのは当然だくらいに思っているのかもしれない。

ここで紹介した母親は、両方とも支配欲求と母子一体感が強い。そのため、娘を独立した一個の人格として尊重しておらず、その領域を平気で侵害する。

それに対して娘がいくら抗議しても一切聞こうとしないのは、血のつながった娘にだって母親に立ち入ってほしくない領域があることに考えが及ばないからだろう。

 

捨てられない「子どもは親の所有物」の思い込み

この手の親について相談を受けることは少なくない。

「うちの親は勝手に鞄の中や机の中をあさる。ノートや手紙も見る。クローゼットの中も勝手にあさっているみたいで、あったはずの物がなくなっていた」

「友達から借りていたマンガ本を、私が学校に行っている間に勝手に捨てられた。

母親に聞いたら『あんなの読んでたら勉強できないでしょ。だから、あなたのために捨てた』と言われた。お小遣いももらってなかったので、弁償できなくて、その友達はそれから口をきいてくれなくなった」

このように子どもの領域を平気で侵害するのは、自分のやっていることがあくまでも正しいと信じているからだろう。

もしかしたら、自分は親なのだからこれくらいのことは許されると勝手に思い込んでいるのかもしれない。このような思い込みの根底には、しばしば「子どもは親の所有物」という認識が潜んでいる。

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