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「思考をやめた人」ばかりが生き残る日本企業の“危うさ”

2019年07月23日 公開

片田珠美(精神科医)

 

こうして〈思考すること〉を人はやめていく

これは大企業に限った話ではなく、中小企業にもアイヒマンはいくらでもいるように見える。というのも、私は大阪市で精神科医として病院と診療所に勤務しており、しばしば中小企業の従業員を診察するのだが、いかにアイヒマンだらけかを患者から聞かされる機会が多いからである。

そのため、むしろ中小企業にアイヒマンが多い印象を個人的には抱いている。その原因を私なりに分析すると、同族企業が多く、規模も小さいので、経営者がヒトラーのような独裁者になりやすいことが大きいと思う。

当然、その下で働き続けられるのは、アイヒマンと同様にもともと〈思考すること〉ができない人、もしくは〈思考すること〉をあえてやめて思考停止に陥る人だけである。

いずれにせよ、アイヒマンのようになるしかなく、それが嫌なら、退職するしかない。だが、実際には、それほど簡単に退職できるわけではない。転職先が見つからなければ、食べていけないからだ。

そのため、賞味期限の書き換えや書類の改ざんなどの不正を命じられても「そんなことはできません」と断るのは、なかなか難しい。かといって、そういう不正に手を染めるのは良心がとがめるし、第一後で発覚したら自分が罪を問われるのではないかという不安にさいなまれる。

こういう葛藤から心身に不調をきたした従業員が私の外来を受診するわけで、アイヒマンになれないからこそ心を病むのだともいえる。

 

ヒトラー型経営者の下でアイヒマン化する従業員

それに対して、ヒトラー的な経営者から悪を強要されても、良心の呵責なしに従う思考停止のアイヒマンは、病気にならずにすむ。

それどころか、経営者に気に入られて出世し、今度は上司の立場で部下に悪を押しつけるようになることも少なくない。だから、ヒトラー的な経営者のいる中小企業には結局アイヒマンしか残らない。

もっとも、そういう中小企業は、遅かれ早かれ経営が破綻してつぶれるだろう。そうなれば、ヒトラーもアイヒマンも退場を余儀なくされる。つぶれたときにヒトラー的な経営者から責任を押しつけられて、うつになったアイヒマン的従業員を診察したこともある。

一方、大企業はなかなかつぶれないので、よほど危機的な事態に陥るまでは誰も声をあげず、アイヒマンであり続けようとする。

しかもブランド力のある大企業にしがみつこうとする社員が多いはずで、そのためにはアイヒマンでいるしかない。当然、大企業はアイヒマンだらけになる。

したがって、どちらにアイヒマンがたくさんいるかはあまり重要ではなく、大企業も中小企業もアイヒマンであふれているのである。



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