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実験心理学が示す3つの間違いと「本当に効果的な勉強法」

竹内龍人(日本女子大学教授)

2019年08月16日 公開 2023年09月05日 更新

 

「問題を解くよりもしっかり見直す」ほうがいいわけではない

短時間で効率的に勉強するための、もう一つの方法は、「テスト効果を使う」ことです。

何かを勉強するとき、多くの人は、参考書をしっかりと読み込むことから始めるかと思います。しかし、効率良く学ぶためは、参考書を読むのは最低限に留めて、できるだけ早い段階で問題を解くことをお勧めします。そのほうが記憶に残りやすいからです。

その効果を示しているのが、米国の研究グループが08年に発表した実験結果です。

米国の大学生に外国語の単語のテストを最初にしたあと、もう一度勉強してもらい、1週間後に最終テストを受けてもらいました。復習の方法は、問題の単語とその訳語のペアを単に見直す「見直し形式」と、問題の単語を見て、その訳を自分で発音する「テスト形式」とし、復習の方法によって、

グループ(1) 全単語について、見直し形式とテスト形式で復習する
グループ(2) 全単語についてテスト形式で復習したうえで、直前に不正解だった単語のみ、見直し形式で復習する
グループ(3) 全単語について見直し形式で復習したうえで、直前に不正解だった単語のみ、テスト形式で復習する
グループ(4) 直前のテストで不正解だった単語のみ、見直し形式とテスト形式で復習する

に分けた結果、最終テストの点数は、(1)と(2)が同じくらい高くなりました。その一方で、総勉強時間は、見直しが少ないぶん、(2)は(1)よりも短くなりました。このように、(2)は、(1)よりも勉強時間は短いのに、最終テストの得点は同程度。そして、主に見直し形式で復習した(3)とは勉強時間がほぼ同じなのに2倍も得点が良いことから、テスト形式による学習(つまりテスト効果)がいかに強力で、かつ、効率的かがわかります。

なぜ、見直すだけよりもテスト形式で問題を解いたほうが好成績につながるかと言うと、問題を解いて「思い出す作業」をすることで、蓄えられた知識が思い出しやすい形に変形されるからです。

記憶は、「記銘」という覚える働きと、「想起」という思い出す働きがセットになっており、普段から記銘だけでなく想起もしていないと、頭から覚えたことを引き出せないのです。

参考書をあまり読まずに問題を解くと、なかなか答えられないでしょうが、すぐに答えを見てかまいません。想起の作業を繰り返すことで、思い出しやすい形で知識を記憶できます。

さらに、前述した分散学習と組み合わせると、学習効果は絶大。例えば、様々な問題集をランダムに解いていき、間を空けて、もう一度解く。すると、知識をぐんぐん吸収できます。

 

《取材・構成:杉山直隆》
《『THE21』2019年8月号より》

著者紹介

竹内龍人(たけうち・たつと)

日本女子大学教授

1964年生まれ。京都大学文学部心理学専攻卒業。東京大学大学院、カリフォルニア大学バークレー校心理学部、日本電信電話〔株〕(コミュニケーション科学基礎研究所)を経て、日本女子大学人間社会学部心理学科教授。認知心理学の研究に取り組む。著書に『進化する勉強法』(誠文堂新光社)がある。

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