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"タワマン被災"で注目のトイレ事情 なぜ人は「便」の話題を避けるのか?



2019年10月30日 公開

ジャック・シム(訳 近藤奈香)

 

なぜ、トイレなのか?

日本ではトイレがあることが当たり前だと感じている人が多い。しかし世界の3人に1人(約23億人)はトイレのない生活を送っている(2015年、ユニセフ発表)。

こうした人々はちょっとした物陰や、川、茂みの裏などで用を足しているため、糞尿は処理されないまま放置されている。さらに、42億人──世界の人口の半数以上──はトイレがあってもきちんとした下水処理がなされていなかったり、屋外で排泄したりしている(2019、ユニセフ発表)。

排泄物はきちんと処理されなければ、川や湖を汚染し、とても危険だ。地面に穴を掘って排泄物を埋めれば、地下水まで汚染される。未処理の排泄物によって汚染された水が原因で命を落とす5歳未満の子供は毎年52万5000人(WHO、2011年発表)。

すなわち毎日1400人以上の子供が、公衆衛生が欠けているために命を落としている。トイレと公衆衛生の問題は、新興国では待ったなしの問題だ。

また、世界中の女性の3人に1人が、安全なトイレ環境がないために、病気やハラスメント、ひいてはレイプなどの危険にさらされている(2012年、ウォーターエイド調べ)。

私の願いは、トイレが確保されることが、ポジティブな連鎖の始まりだと、多くの人に気づいてもらうことだ。きちんとしたトイレが使えることで、人は尊厳を取り戻すことができる。

病気が減少し、就学率が上がることによって生産性も向上し、市場や投資意欲なども改善され、ひいては貧困の減少にも繋がるのだ。

 

最大のタブー「トイレ」

世界中で、トイレの問題がなぜなかなか解決されないのだろう? 一番大きな理由は、トイレの問題が「タブー」だからだ。私たちは子供の時から、トイレや排泄物の話をしないように、と教えられて育つ。

「小便、大便、こうした話はしないこと!」

トイレの話題そのものがタブーだと思われていることが、トイレの問題が解決されない最大の理由なのだ。問題について話すことができなければ、その問題を解決することなんてできない。

下品、汚い……こうしたイメージがつきまとうトイレの話題は長年、そして今でも多くの国や地域でタブー視されたままだ。したがってトイレの話に真剣に耳を傾けてもらうのは、想像以上に難しい。タブー、すなわち人々の「羞恥心」が、トイレや衛生問題の解決の邪魔をしているのだ。

そうしたタブーの壁を打ち破るために、私がとった戦略は「笑い」、すなわちユーモアだ。人にモチベーションを与え、考え方を変えるには、ポジティブなものに光をあてる必要がある。タブーが「鍵がかけられた扉」であったとすると、ユーモアはその扉を開ける鍵だ。

2001年に創設したWTO(世界トイレ機関)の名前も、こうした戦略の一環だ。最初に聞いた人は「WTO(世界貿易機関)」だと思うが、「いえいえ、もう一つのWTO、世界トイレ機関ですよ」と言うと、笑い出す。

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