<<2019年11月23日、フランシスコ教皇を乗せた飛行機が羽田空港に到着する。ローマ教皇の来日は実に38年ぶりのこととなる。
現在の教皇フランシスコは2013年の就任以来、歴代教皇と比較しても異例の世界的人気を集めているが、歴史における過去のローマ教皇たちも世界を動かす力を持っていた。
その絶大な力に目をつけた人物が今から400年以上前の日本に存在した。かの戦国武将・伊達政宗である。『なぜローマ法王は世界を動かせるのか』の著者であり、元バチカン公使の徳安茂氏が、伊達政宗とローマ教皇の関係を紐解く。>>
※本稿は徳安茂著『なぜローマ法王は世界を動かせるのか』より一部抜粋・編集したものです
ローマ法王に伊達政宗が送った手紙の「驚きの内容」
日本人とカトリックの出合いは、イエズス会のサンフランシスコ・ザビエルが日本の土を踏んだ1549年のことだった。戦国時代のまっただなかだ。
バチカン図書館には、1615年、ある戦国武将がローマ法王宛に送った手紙が残されている。手紙の送り主は伊達政宗(1567〜1636)だ。私は、いまから400年以上前に、奥州仙台藩主の伊達政宗が当時のローマ法王パウロ5世に宛てた書簡を見せてもらった。
政宗自筆の署名入りの手紙は、慶長遣欧使節団で知られる支倉常長(1571〜1622)に政宗が託したものだ。ラテン語で書かれているが、伊達家の花押(かおう)と政宗の署名は真正のものとされている。
その手紙には、英語と日本語の訳文が添えられていた。古い文体で書かれているので読みづらくはあったが、大意はほとんど理解できる。
政宗のローマ法王に対する驚くほどへりくだった様子が読み取れた。いわく
「私は仙台藩がキリスト教の栄光に包まれることを熱望しており、そのためにはローマ法王の忠実な下部として犬馬の労をとることも厭わない。よってわが藩にカトリックの宣教師を速やかに派遣してもらいたい。この希望を教皇聖下に請うべく、私はその足下にひれ伏し、そのおみ足に口づけする」
という趣旨のことが書かれてあった。