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元花組トップの明日海りおが「新時代の宝塚歌劇の象徴」だった理由

松島奈巳 (演劇記者)

2019年12月04日 公開 2022年01月26日 更新

 

変わりゆく宝塚と時代を映すトップスター

OGを例にすると、わかりやすい。

2003年公開の映画『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』で、真矢みきはキャリア警察官僚・沖田仁美を絶妙の表現力で演じきった。

天海祐希が、日本テレビ系『女王の教室』で絶賛されたのは2005年。2006年に檀れいは、山田洋次監督作『武士の一分』のヒロインに抜擢され、2007年からサントリー金麦のCMキャラクターをつとめる。

宝塚歌劇に向ける眼差しが、変わりつつあった。

2013年放送のTBS系ドラマ『TAKE FIVE』(唐沢寿明・主演)では、

《宝塚歌劇団の現役男役トップスターの出演も決定!
 星組トップスター・柚希礼音(ゆずきれおん)、宙組トップスター・凰稀かなめ(おうきかなめ)、月組トップスター・龍真咲(りゅうまさき)に加え、星組男役スター・紅ゆずる(くれないゆずる)、花組男役スター・明日海りおの5名が本人役で出演する。

表向きは宝塚歌劇団で活躍する人気スターの顔を持ちながら、裏では愛のある盗みを掲げる窃盗集団「TEAM FIVE」として暗躍する5人組を演じ、唐沢率いる怪盗軍団「TAKE FIVE」と対峙する。 (TBSの番組サイトより 2013年4月14日付)》

カッコ良かった。

舞台俳優の場合、顔立ちも姿も、決して万人向けとは言いがたいケースがある。

だが柚希礼音のたたずまい、凰稀かなめの美形は、まさに世の中基準。テレビ基準だったと思うのだが、いかがだろうか。

従来、タカラジェンヌがテレビ番組に出演する場合、「特別枠」という扱いだった。「カッコいい」「キマっていますね」という応対も、「宝塚歌劇の舞台に立つ人として」という前提だった。

しかし凰稀かなめや明日海りおになると、テレビ基準での立派な「カッコいい」であり「キマっている」となる。「宝塚歌劇団員としてカッコいい」ではなく、「並み居るタレント・俳優陣に比べても、カッコいい」のである。

カッコいいタレントはそこらに居るが、明日海りおの場合、歌えて踊れて芝居ができる。歌・ダンス・演技、そして容姿と四拍子揃っている。実際、前述の『SMAP×SMAP』をたまたま視聴して、明日海りおファンになったという話はよく聞く。

新参の明日海ファンにとって、トップ就任以降の再演オンパレードは思わぬ効果をもたらした。

新規顧客にとっては初の観劇。しかもこれらは作品としては圧倒的に面白い。だからこそ再演され続けている。

はてなと首をかしげる新作に当たってしまって「明日海りおはカッコいいけど、芝居自体はツマらない」という落伍者を出すことなく、明日海の新規ファンは深化していく。スターもカッコよければ、作品も面白い! ユニークなめぐりあわせだった。

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