誰もがカルロス・ゴーン被告に…「年収にこだわる人」が陥る“欲の罠”
2020年01月06日 公開
「快楽の味は短くて苦痛」
それでも、今回のような公金の私的流用事件が起きると、改めてゴーン氏の報酬額に目がいきます。あるニュースキャスターの一言が印象的でした。
「ゴーンさんは、足るを知らなかったのでしょうね」
普通なら聞き流してしまいそうなコメントです。しかし、その言葉は意味深長です。いずれも仏教の教えからくるものだからです。
「足るを知る」とは一体、どのような教えなのでしょう。
釈尊(お釈迦さま)が入滅の際に弟子に説いた説法をまとめた経典『遺教経』には、「少欲知足」が説かれています。訳せば、こういうことです。
少欲: 多欲の人は多く利を求むるがゆえに苦悩も多い。少欲の人は求めることなく、欲もないので、多欲の人より憂いが少ない。
知足: 足ることを知る人は、貧しいが心は豊かだ。足ることを知らない者は、常に五欲にとらわれ、足ることを知る者から憐憫の情をかけられる。
さらに、法句経(ダンマパダ)も紹介しましょう。「ダンマ」は「真理の法」、「パダ」は「言葉」という意味です。ここでも、多欲を戒めています。(以下、『ブッダの真理の言葉 感興のことば』中村元訳、岩波書店刊より引用)
「たとえ貨幣の雨を降らすとも、欲望の満足されることはない。『快楽の味は短くて苦痛である』と知るのが賢者である」(法句経 14章)
釈尊の言葉集のウダーナヴァルガ(前掲書)でもこのように語られています。
「たといヒマーラヤ山にひとしい黄金の山があったとしても、その富も一人の人を満足させるのに足りない」(ウダーナヴァルガ第2章 19)
いずれも人間の欲深さを戒めている点で、言い得て妙と言えます。