「役立たず」の乳首がオスに残されたことの意味
マレーシアのダヤックフルーツコウモリの集団では、捕獲された18匹のうちの13匹がオスで、そのうちの10匹が、乳腺から少量のおっぱいを出したといいます。
このオスの乳首は、おっぱいを出しているメスの乳首よりも小さくはあったものの、よく観察してみると、機能的にメスと同様でした。しかし、3匹の大人のメスから集められたおっぱいが350マイクロリットルだったのに対し、2匹のオスから集められたおっぱいの量は4~6マイクロリットルでだいぶ少量です。
ダヤックフルーツコウモリのオスが、実際に子どもにおっぱいを与えていたかどうかはだれも観察していませんが、おっぱいを出したオスは活発な精子ももっていたので、先の人間のケースのように、機能低下が原因ではないのでしょう。
コウモリは一夫一妻で、両親で子供の面倒をみます。もしも実際にオスも子どもにおっぱいを与えるということがあったとしたら、自然の神秘さを感じないではいられません。
ダヤックフルーツコウモリのオスだけではなく、2014年には淡路島でオスのヤギがおっぱいを出し始めたという話がありました。授乳中の仔ヤギが、母ヤギから引き離されて鳴き始めたところ、近くにいたオスヤギがかわいそうに思ったのか、おっぱいを出すようになったとのことです。
世の中の男性には、小さいながらも乳首がついていることはみな知っているし、それは役には立っていないと思っています。しかし、なぜそこにあるのでしょう。もしかしたら、環境の変化に対応できるように自然が与えてくれている予備のようなものかもしれません。
そもそもメスでさえ乳首をもっていない生き物も存在します。現在の哺乳類で、もっとも祖先的と考えられている単孔類です。ただし、母親のおなかに「乳嚢」という、おっぱいが分泌される場所が2か所あります。
それぞれの乳嚢には100くらいの小さな孔が開いたミルクパッチと呼ばれる部分があり、赤ちゃんはそこから分泌される乳を舐めとるようにして受け取ります。
おっぱいには、まだ知られていないふしぎがたくさんあるのです。