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自分なりのストレス対処法を100個書き出し、常に持ち歩こう

伊藤絵美(洗足ストレスコーピング・サポートオフィス所長)

2020年02月20日 公開 2023年08月17日 更新

伊藤絵美

ストレスの原因を全部書き出してみる

 ただし、その前には準備が必要です。

 ストレスに対処するためには、自分がどのようなことをストレスと感じ、その際に心や身体がどのような反応をするのかを理解しておかなければなりません。

 ストレスを与える人や物、環境などの「ストレッサー」と、それに対して起こる心や身体の変化である「ストレス反応」の双方をモニタリングしましょう。

 まずは、ストレッサーを書き出します。今感じているストレスの原因となった出来事や状況をリストアップしましょう。

 このとき、「パワハラ上司」などのわかりやすいストレッサーだけでなく、「部屋が散らかっていること」「身体のかゆみ」「返信をしていないメール」など、日常生活の中に無数にある小さなストレッサーも書き出してください。見過ごしてしまいがちですが、放っておくと蓄積し、「なぜかイライラする」といった原因不明で対処できない厄介なストレッサーになります。そうならないよう、小さな違和感の原因を明確化しましょう。

 次に、リストアップしたストレッサーに対する、自分のストレス反応を詳しく書き出します。

 ストレス反応には四つの種類があります。

 一つ目は「認知」。その出来事や状況をどう認識したか、ということです。例えば、「仕事でミスを指摘された」というストレッサーがあると、「自分はダメだ」「自分にばかり仕事が回ってくるから仕方がない」「他の人なら許してもらえるはずなのに、自分は損をしている」など、様々な思考が次々に湧いてくるでしょう。

 二つ目は「気分・感情」です。こちらは頭に浮かぶ思考ではなく、心で感じる感覚です。憂鬱、ショック、むかつく、不信感、くやしい、みじめ、無気力感など、短い言葉で言い切れるのが特徴です。

 三つ目は「身体反応」。震える、頭に血が上る、胃が痛む、喉が渇く、などです。身体反応は個人差が大きく、なかなか気づきづらい場合もあるので、無理に多く書き出す必要はありません。

 四つ目は「行動」。ストレスを感じたときに、無意識にどんな行動に出ているかをモニタリングします。例えば、うつむく、無理に笑う、カラオケに行く、トイレで泣く、などです。

 以上を書き出すと、自分がどういうときにストレスを感じるのか、どう受け止めるのか、傾向性が見えてきます。ストレッサーによってストレス反応が違うことにも気づけます。

 このようにモニタリングをするだけでも、少し心が整理されます。書き出す作業そのものが、コーピングとして機能するのです。

 

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マッチングを重ねるとストレス耐性も上がる

著者紹介

伊藤絵美(いとう・えみ)

洗足ストレスコーピング・サポートオフィス所長

精神科クリニックや民間企業でメンタルヘルスの仕事に就いたあと、2004年より現職。オフィスでのカウンセリングの他、企業研修やセミナー、ワークショップなども開催。慶應義塾大学大学院博士課程修了、博士(社会学)。臨床心理士。精神保健福祉士。公認心理師。著書に『ケアする人も楽になる 認知行動療法入門』『ケアする人も楽になる マインドフルネス&スキーマ療法』(ともに、医学書院)などがある。

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