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「これ以上引きずらない」ためのストレス対処法

伊藤絵美(臨床心理士)

2016年10月27日 公開 2023年09月12日 更新

「これ以上引きずらない」ためのストレス対処法

ストレスの悪循環を断ち切る「コーピング」とは?

NHKスペシャル『シリーズ キラーストレス』でも取り上げられるなど、ストレスの対処法として「コーピング」が話題だ。現代に生きる私たちは常にストレスを抱えている。そこから逃れられないのであれば、せめて負担を減らしていきたいもの。私たちが感じる「ストレス」を分析し、それに対処する「認知行動療法」、そして「コーピング」について、臨床心理士の伊藤絵美氏にうかがった。

 

そもそもストレスの本当の定義とは?

 私のカウンセリングオフィスでは、ストレスマネジメントの手法として「認知行動療法」を使っています。これは、自分自身のストレスに対処する方法として非常に有効です。

 そもそも、「ストレス」という言葉の定義をきちんと理解している人は少ないのではないでしょうか。ストレスは、「ストレス状況(ストレッサー)」と「ストレス反応」という二つの相互作用から成り立っています。

「ストレス状況」は、自分にストレスを与えるさまざまな環境的要因です。病気やパワハラなど、明らかなストレス要因をはじめ、「上司に叱られた」「エレベーターが来ない」「子供のおもちゃが部屋に散乱している」など、イラッとしたり複雑な気分になったりする、日々感じる“小骨が刺さった”ような小さなこともストレス状況となります。

 一方の「ストレス反応」は、ストレス状況に対して自分の中に生じるさまざまな反応を指します。「また怒られたと思い、萎縮する」「舌打ちをする」「部屋を散らかす子供に怒りを感じる」などです。

 認知行動療法では、この「ストレス反応」をさらに4つの領域に分けて理解します。その4つとは、「認知」「気分・感情」「身体反応」「行動」です。

「認知」とは、頭の中に浮かぶ考えやイメージのことです。私たちの頭の中では、朝から晩まで何らかの考えやイメージが浮かんでは消えていきます。

「朝から上司と顔を合わせてしまった。今日も不機嫌そうだな。そういえば、急ぎの書類を頼まれていた。あっ、クライアントに電話をかけなくちゃ」

 こうして次から次へと頭に浮かぶ考えは、すべて「認知」。言葉で構成されるものだけでなく、「上司の怒った顔がよみがえる」といった映像によるイメージも「認知」です。

「気分・感情」は、心で感じるその時々の感覚や気持ちです。「嬉しい」「悲しい」「不安」「ラッキーだ」など、短い言葉で言い表わせる感情です。

「身体反応」は、身体の表面や内部に現われる生理的な反応のこと。「ドキドキする」「めまい」「涙が出る」などが相当します。

「行動」は、外側から見てわかるその人の振る舞い。「歩く」「座る」「本を読む」「メールを送る」など、人間のあらゆる動作が「行動」になります。

 こうして、人間の体験を「ストレス状況」と「4つの領域に分けたストレス反応」に整理して理解しようとするのが、認知行動療法の基本モデルです。

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モヤモヤを書くだけでもストレスは軽減される

著者紹介

伊藤絵美(いとう・えみ)

洗足ストレスコーピング・サポートオフィス所長

精神科クリニックや民間企業でメンタルヘルスの仕事に就いたあと、2004年より現職。オフィスでのカウンセリングの他、企業研修やセミナー、ワークショップなども開催。慶應義塾大学大学院博士課程修了、博士(社会学)。臨床心理士。精神保健福祉士。公認心理師。著書に『ケアする人も楽になる 認知行動療法入門』『ケアする人も楽になる マインドフルネス&スキーマ療法』(ともに、医学書院)などがある。

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