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くらし

「自分は、酒もタバコもやらない!」…それでも非情な"がん宣告"の現場

刀根健

2020年02月15日 公開 2020年07月04日 更新

 

「自分が死ぬ確率」を調べる指が震えた

「じゃ、15日で」
「15日の11時半はよろしいでしょうか」
「はい」

掛川医師は目の前のパソコンにパチパチと打ち込んだ。「予約を取りました」

「ありがとうございます。この間何か気にすることとかはありますか?」
「いえ、今までどおりにお過ごしください」

最初からずっと室内にいた若い研修医が僕を悲痛なまなざしで見つめていた。きっとなんて言葉をかけていいのかわからなかったのだろう。だが、なぜか腹が立った。

肺がんステージ4の宣告をするときの実例にされてしまったような気がしたからかもしれない。

診察室を出て暗い廊下を通ると、古い長椅子に咳き込んでいる人たちがたくさん座っていた。「こほこほこほ」「げほげほ」ひっきりなしに咳が聞こえる。みんなこんなに咳をしていたっけ?

目の前に広がる世界が冷たいモノトーンのように、僕には感じられた。そこは診察室に入る前と、明らかに違う世界になっていた。

病院を出て電車に乗ると、僕は急に落ち着きを失った。スマホでステージごとの生存率をネット検索すると、指が震えていることに気づいた。

ステージ4の5年生存率は掛川医師の話と違い10%以下だった。1年生存率が30%だった。気を遣ってくれたのか……。

1年以内、死ぬ確率が70%……。目の前が暗くなった。

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