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「人を殺すのは人であって銃ではない」 アメリカで銃規制が進まない4つの理由



2020年02月27日 公開

西山隆行(成蹊大学法学部教授)

ヘルシンキサミットでのトランプとプーチン(写真:ロシア大統領府公式サイト www.kremlin.ru)
ヘルシンキサミットでのトランプ大統領(2018年7月16日)
(写真:ロシア大統領府公式サイト www.kremlin.ru)

アメリカは周知の通り銃社会であり、各地で起こる銃乱射事件に代表されるように、銃による被害者は多い。

そうなると、日本的感覚では銃規制を強化すべきだと考えるが、アメリカでは逆の思考が働く場合もある。例えば、小学校などで銃乱射事件が起きた場合、先生に銃所有を許可し、有事の際に発砲できるようにすべきだと主張する人もいるのである。

アメリカでは銃を持つ権利は国民の自由を保障する上で非常に重要で、銃は国民の自由を象徴するものだとの認識が強い。

本稿では、アメリカにおける銃をめぐる問題について解説する。

※本稿は西山隆行著『格差と分断のアメリカ』(東京堂出版刊)の内容を一部抜粋・編集したものです。

 

国民1人1丁に相当する数の銃が存在する国

アメリカ国内には3億丁を超える銃が存在している。今日アメリカに居住している人が3億2000万人ほどであるので、1人1丁程度の銃が存在する計算となる。

そして2010年には銃に関連して3万人以上が死亡している。

これほど多くの銃が存在し、銃によってかくも多くの人が死亡していることを考えると、アメリカ国内で銃規制に関する議論が高まるのは自然と思えるかもしれない。

実際、アメリカ国民の大半が穏健な銃規制には賛成している。例えば、重罪を犯して刑に服したことのある人物は銃を持ってはならないという規制や、マシンガンなどの大型銃に対する規制などには大半の人々が賛成している。

にもかかわらず、銃規制はなかなか進まない。それはなぜかを考えるにあたっては、少なくとも三つのポイントがあげられよう。

一つは建国の理念と反政府の伝統である。

ヨーロッパの君主制を否定するというのがアメリカの国の成り立ちであり、常備軍と警察を否定し、自衛のために銃を持つことは自由の象徴であり、国民の権利だという考えが根強いのである。

それを象徴的に示しているのが、合衆国憲法の修正第2条である。そこでは「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を所有し又携帯する権利は侵してはならない」と定められている。

この条文中の「規律ある民兵」という言葉に時代錯誤を感じる人もいるだろう。だが、この民兵という言葉には、政府による圧政に対抗する存在として象徴的な意味が与えられている。

政府が暴力を独占してしまえば、その暴力を国民に向ける可能性が出てくる。独立に際しイギリス本国と民兵が戦ったことから、政府による圧制に抵抗する存在として民兵が位置づけられているのである。

政府に対する不信感、政府による圧政から逃れるためには自衛が必要という意識、公共の利益を守るためには市民が能動的に活動する必要があるとの発想の表れなのである。

世論調査の結果も興味深い。「銃購入希望者の身元調査をすべきか?」との質問には過半数の人がすべきだと答えるが、「そのための法律を連邦議会上院が通すべきか?」との質問には、同じ人々を対象として行われた調査であるにもかかわらず、過半数の人が反対する。

ここでもアメリカ国民の政府への反発の強さ、政府との微妙な関係性が示されている。

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