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社会

世界が注目するハラリ教授が示した、「新しい疾病」を解決してしまう者の正体

ユヴァル・ノア・ハラリ,柴田裕之(訳)

2020年03月13日 公開

 

「雇用の喪失」はITとバイオテクノロジーの融合から発生する可能性

ところが、じつは情動や欲望が生化学的なアルゴリズムにすぎないのなら、コンピューターがそのアルゴリズムを解読できない理由はない。そして、それをホモ・サピエンスよりもはるかにうまくやれない道理はない。

歩行者の意図を予測する運転者や、お金を借りようとする人の信頼性を評価する銀行家や、交渉の場の雰囲気を測る弁護士は、魔術を頼りにしたりはしない。

本人は気づいていないが、彼らの脳は、表情や声の調子、手の動き、さらには体臭まで分析して生化学的なパターンを認識している。適切なセンサーを備えたAIなら、人間よりもそのすべてをはるかに正確かつ確実にやってのけられるだろう。

したがって、雇用の喪失の恐れは、情報テクノロジー(IT)の興隆からのみ生じるわけではない。ITとバイオテクノロジーの融合から生じるのだ。

機能的磁気共鳴画像法(fMRI)スキャナーから雇用市場までの道は長く曲がりくねっているが、それでも数十年のうちにはたどり終えられるだろう。

今日、脳科学者が扁桃体と小脳について突き止めている事柄が、2050年にはコンピューターが人間の精神科医やボディーガードを凌ぐことを可能にするかもしれない。

このようにAIは、人間をハッキングして、これまで人間ならではの技能だったもので人間を凌ぐ態勢にある。だが、それだけではない。

AIは、まったく人間とは無縁の能力も享受しており、そのおかげで、AIと人間との違いは、たんに程度の問題ではなく、種類の問題になった。AIが持っている、人間とは無縁の能力のうち、とくに重要なものが二つある。接続性と更新可能性だ。

人間は一人ひとり独立した存在なので、互いに接続したり、全員を確実に最新状態に更新したりするのが難しい。

それに対してコンピューターは、それぞれが独立した存在ではないので、簡単に統合して単一の柔軟なネットワークにすることができる。

だから、私たちが直面しているのは、何百万もの独立した人間に、何百万もの独立したロボットやコンピューターが取って代わるという事態ではない。個々の人間が、統合ネットワークに取って代わられる可能性が高いのだ。

したがって、自動化について考えるときに、単一の人間の運転者の能力と単一の自動運転車の能力を比べたり、単一の人間の医師の能力と単一のAI医師の能力とを比べたりするのは間違っている。人間の個人の集団の能力と、統合ネットワークの能力とを比べるべきなのだ。

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