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生き方

「過去の過ちを何度も蒸し返す妻」に苦悩する夫のための“逆転の一手”

黒川伊保子(感性リサーチ代表取締役社長/感性アナリスト)

2020年04月24日 公開 2020年04月24日 更新

 

感情トリガーは、リスクヘッジの鍵

さらに、感情トリガーには、もう一つ特徴がある。過去の類似記憶を瞬時に引き出すこともできるのだ。いくばくかの体験記憶には、心の動き(感情、情動、気分)が見出しについている。

この感情の見出しを、感情キーと呼ぶ。心の動きがあったとき、これをトリガーにして(感情トリガー)、同じ感情キーが付いている記憶を引っ張ってくるのである。

たとえば、ふと不安を感じたとき、過去の同様の不安と共に格納されている記憶を瞬時に取り出すことができる。「これって、お父さんが倒れる前の感じに似てない? すぐに病院に行かなきゃ」のように。

つまり、感情トリガーを駆使する脳は、日常生活の中に潜む危機に気づき、大ごとになる前に対処することが得意なのである。しかも、ほぼ無意識のうちに。感情トリガーは、リスクヘッジ(危機回避力)の鍵と言っても過言ではない。

感情トリガーはリスクヘッジの鍵(黒川伊保子)
イラストレーション/大高郁子

 

蒸し返しの天才?

ただし、この能力、はたから見たら、厄介に見えることがある。何十年も前の、今さら言ってもしょうがないことを、何度も瑞々しく思い出すからだ。再体験するから細部まで思い出せる。

新たな発見さえある。夫が何か無神経な発言をすると、過去の無神経な発言を瞬時に引き出してきて、ときには分析し直して見せる。このように、感情トリガーを発動させやすい状態の脳は、はたから見れば、「愚痴を垂れ流す」、「蒸し返しの天才」のように見える。

しかし、これを愚行と侮ってはいけない。この行為の裏には、「深い気づき」と、飛びぬけたリスクヘッジ能力があるのである。

 

女性の脳は、プロセス指向共感型を優先する傾向がある

もうとっくにお気づきだと思うが、女性は、とっさに感情トリガーを使う人が多いのだ。古来、子育てを担当していた女性の暮らしの中では、「深い気づき」や「リスクヘッジ」のほうが、目の前の白黒をつけることよりずっと、命にかかわることだったからだろう。

感情トリガーを駆使する、プロセス指向共感型。それは、深い気づきによって、人間関係のバランスをとり、無意識のリスクヘッジを繰り返して、家族や仲間を守り抜く、脳の使い方である。さらに後に述べるが、家事のようなマルチタスクをストレスレスでこなすための素養でもある。

長い授乳期間を余儀なくされる人類の女性たちは、おそらく何万年も前から、女同士の密なコミュニケーションの中で、おっぱいを融通し合い、子育ての知恵を出し合ってきた。共感しあうことで、それを実現してきたのである。

女たちが生存可能性を上げるための真髄が、女性脳にはゆるぎなく搭載されている。何万年もの生殖(その能力が高い女性脳が多く子孫を残す)というフィルターによって、研ぎ澄まされてきたのである。

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「共感」は、感情トリガーのアシスト役

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