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「どうせ、うちの会社は変わらない」と嘆く社員を量産させる”日本企業の性悪説”

沢渡あまね(業務改善・オフィスコミュニケーション改善士)

2020年05月11日 公開 2024年12月16日 更新

「どうせ、うちの会社は変わらない」と嘆く社員を量産させる”日本企業の性悪説”

《そもそも、現場のマネージャーがするべき仕事とは、どんなものなのか? 数多くの職場に対するコンサルティングを行なってきた沢渡あまね氏は、今、マネージャーに求められていることは、これまでとは違っていると話す。詳しく話を伺った。(取材・構成:塚田有香)》

※本稿は『The21』5月号に掲載された「マネジメントはピラミッド型からオープン型に変わるとき」より抜粋・編集したものです。

 

トップダウンの組織が勝てた時代は終わった

表1 これからの組織は「オープン型」でなければ勝てない(沢渡あまね)

これからの時代に求められるマネジメントは、過去のものとはガラリと変わります。これまでのマネジメントを「統制型(ピラミッド型)」とするなら、今後は「オープン型」に変えていかなければなりません。

従来の日本のビジネスモデルは、自動車産業に代表される大手製造業に最適化されていました。経営や企画部門が「答え」を持っていて、現場がその「答え」に従うことで、収益を上げることができていました。

この旧来の製造業モデルの組織を図にすると、表1にあるようなピラミッド型になります。経営や企画部門が頂点に立ち、生産管理、製造、開発、調達などのオペレーションを担う各部門が下から支える組織です。

この組織における指示や情報の流れは、完全なトップダウンです。これが、統制型マネジメントです。

統制型とは、すなわち「逸脱を許さないマネジメント」です。性悪説を前提とし、個人を信頼せず、全員に同じシステムとルールの中で画一的に働くことを強制します。

企画部門やIT部門などのクリエイティブな部門であっても、製造現場と同じ仕事のやり方を求められ、全員が同じ時間に出社し、同じ場所に集まり、決められた座席で決められた仕事をする。これで創造性が高まるはずがありません。

トップダウン型の組織におけるコミュニケーションは、報連相です。トップから与えられた命題やテーマに沿って、下の人が上の人に報告・連絡・相談をするわけです。情報共有も、極めてクローズに行なわれます。「上が必要だと判断した情報だけを、必要な人にだけ伝える」という逐次共有が基本です。

そんな組織では、仕事の進め方は「ウォーターフォール型」になります。滝が上から下へ落ちるごとく、上から下へと指示や命令が落ちていく。これでは物事が動き出すまでに時間がかかりますし、下の人間は受け身の「指示待ち人間」になります。

私は統制型マネジメントを批判しているわけではありません。確かに、過去においては「勝ちパターン」だったからです。しかし、今後は通用しなくなります。なぜなら、もはや経営や企画部門が「答え」を持っていない時代だからです。

それを象徴する出来事が、2018年に発表されたトヨタ自動車とソフトバンクの提携です。自動車業界のトップに君臨する会社でさえ、自分の組織だけでは「答え」を見出せず、サービス型の新しいビジネスモデルを生み出すために他業種と手を組んだ。旧来の製造業モデルは、既に限界に来ているのです。

雇用や労働環境も変化しています。トヨタ自動車の豊田章男社長が「終身雇用を守っていくのは難しい」と発言したように、上の言うことに従っていれば一生安泰だった時代は終わりました。

だから、統制型の組織で働く人たちの多くが、将来への不安や「どうせうちの会社は変わらない」という無力感を抱いています。この状態で勝てる組織になるはずがありません。日本の生産性の低さがよく指摘されますが、それも統制型マネジメントを引きずっていることが大きな要因です。

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イノベーションの鍵は「性善説」にあり

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