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結局、目標達成は「何をしないか」で9割決まる

長田英知(良品計画執行役員)

2020年07月29日 公開 2023年09月15日 更新

捨てる代わりに「甘えていいこと」を決めよう

目標達成のために多くのことを犠牲にしなくてはならない現実に直面したとき、私たちの反応は二極化します。何が何でも目標を達成しなくてはならない、頑張ろうと決意を強くする人もいらっしゃるでしょう。

しかし多くの方は目標達成のためにこんなに多くのことを犠牲にするなんてできないと、心が折れてしまうのではないでしょうか。

そこで必要となってくるのは、自分をいかに甘やかすかという視点です。目標達成のための様々な犠牲を「アメとムチ」のムチとするならば、その犠牲の代償として何かのご褒美=アメを設けるということです。

目標を達成するため自分は頑張っていて、そのために我慢していることも多いのだから、代わりに自分を甘やかす部分を残しておこうということです。

例えば、筆者は書籍執筆の際、前作、本作ともに約3ヶ月で執筆したのですが、前著はゴールデンウィークの10連休のほとんど、今回の著作では冬休みのほとんどを執筆の時間に充てていました。休暇にどこか旅行に行くのではなく、書籍の執筆をすることを選択したわけです。

私の場合、旅行に行けないという犠牲を自分自身に納得させる代わりに、普段は体重を気にして控えている甘いものを、書籍を執筆しているときだけは制限しないようにしています。

普段とは異なる脳の使い方をして書いているので、カロリーも普段より消費しているであろうという勝手な理屈もつけて、気にせずに好きなものを食べるのです。

普段行っていない甘えを自分に認めることは、ある種の罪悪感をもたらしますが、この罪悪感が逆に、何がなんでも目標を達成しなくてはならないという推進力をもたらします。

このように、犠牲にするところと甘やかすところのバランスをうまく整えることで、いかに目標達成のための戦闘態勢を取れるかが鍵となってきます。人は決して強い存在ではないということをいつも心に留め、逃げ道を残しておくことが賢いやり方なのです。

 

どうすれば効率良く方法論を選べるのか?

目標を設定し実行する際に、時間をとってきちんと考えなくてはならないのが、どうやって自分に合った方法論を選択するのかということです。我々が立てる目標のほとんどは、これまで誰かが達成してきたものです。

その結果、目標を達成するためのハウツーや方法は世の中にありすぎるため、どれを選べば良いのかわからず悩んでしまうことが多くあります。数多ある方法論の中から、自分にあったものを見つけ出すことは、とても難しいことです。

ですから私たちは目標を達成することに腐心する前に、準備段階において目標を達成するための手法を十分に吟味することが必要になるのです。

では、どのようにして自分に合った目標達成の方法論を選べばよいのでしょうか。ここで最初に行うことは、自分が達成したい目標に関連する世の中の方法論をすべて洗い出してみることです。

例えばダイエットの方法論であれば、ヨガ、ピラティス、脂肪吸引、りんご酢を飲む、など様々なものがあると思います。

また試験に合格するための方法論としては、独学する、塾に通う、通信講座を受ける、インターネット講座を受けるなどが挙げられます。これらの手法についてまずは情報収集し、全部書き出してみましょう。

情報収集については、書店に行ってみたりインターネット検索をすることで、幅広く行うことができるでしょう。またオンラインでの情報収集と同じくらい大事なのが、オフラインでの情報収集、すなわちその目標を達成した人に話を聞くことです。

実際に会って話を聞くことで、達成した人にしかわからないポイントやノウハウを知ることができます。また生の声を聞くことは、目標達成に向けた自分の気持ちを固めるという意味でも効果的です。

情報を一通り集めることができたら、その方法論を一度全部、紙に書き出して整理してみます。集めた情報をすべて書き出すことで、目標に関わる方法論の全体感を摑むことができます。

 

方法論を複数選んで「パッケージ化」する

方法論を全部書き出したら、次に行うのは方法論をグループ化して、整理することです。

ダイエットを例にとると、ヨガやピラティスなどは運動系、りんご酢を飲むなど特定の食事をとるのは摂取系、カロリー計算は食事制限系、脂肪吸引は外科系などといった形で、それぞれグループ化が可能です。こうしたグループ分けを行う中で、それぞれの方法論の特徴を理解していきます。

グループ分けを行ったら、自分にフィットすると思うグループをすべて選び、その中から、自分にとってやりやすく、かつ効果が高そうな方法論を複数選んで、自分なりの目標達成パッケージを作り出します。例えばダイエットを目指すときに、運動系と食事制限系の中から2つの手法を組み合わせる、というイメージです。

なぜ方法論を1つではなく、複数選ぶのか。理由の1つはリスク回避です。目標を達成するための方法論を1つに絞り込んでしまうと、実際にやってみてうまくいかなかった場合、そこからなかなか盛り返すことができず、目標を達成できなくなる確率が高くなってしまいます。

一方、方法論を複数組み合わせておくと、その中の1つがうまくいかなくても、他の方法論が効果を発揮していれば、その方法論のウェイトを高めることで、目標達成に向けた活動を進めることができます。

また方法論を選ぶ際には、同じグループの方法論から複数選択するのではなく、なるべく異なるグループから選択する方がリスクを軽減できます。

先ほどのダイエットの例で言えば、食事制限と運動の方法論を組み合わせた方が、食事制限の方法論のみの組み合わせよりも、自分に合わなかったときのリスクを避けられます。

また複数の方法論を選ぶのが良いからといって、多く選びすぎてもいけません。あまりに多くの方法論を併用すると、どの方法論がうまく行っているのか、その効果を正しく評価することが難しくなり、また実施する際の負担も増えるので、選ぶ際は2~3つに絞るようにしましょう。

【著者紹介】長田英知(ながた・ひでとも)
東京大学法学部卒業。地方議員を経て、IBMビジネスコンサルティングサービス、PwC等で政府・自治体向けコンサルティングに従事。2016年、Airbnb Japanに入社。日本におけるホームシェア事業の立上げを担う。2022年4月、良品計画に入社。同年9月よりソーシャルグッド事業部担当執行役員に就任。社外役職として、グッドデザイン賞審査委員(2018~2021)、京都芸術大学客員教授(2019~)等。著書に『たいていのことは100日あれば、うまくいく』(PHP研究所)、『ワ―ケーションの教科書 創造性と生産性を最大化する「新しい働き方」』(KADOKAWA)などがある。

 

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