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“伝わる文章の達人”が意識している「たった1つのこと」

2020年07月30日 公開

竹村俊助(編集者)

 

半径3メートル以内のことでたとえてみる

たとえるときは、なるべく多くの人がイメージしやすいものでたとえるほうがいいでしょう。できれば半径3メートルくらいにある身近なものだと多くの人が感情移入しやすくなります。

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ルールがない組織って、自由そうに見えてストレスフル。いわば信号のない交差点。みんながずっと気を使わないといけないから、進むのも止まるのもスムーズじゃない。そういう組織ではたいてい「ケースバイケースに対応する」が常套句。だからぜんぜん安心できない。
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これも「信号」「交差点」という身近な存在を引き合いに出したものです。何かを説明するときに「これ、何かに似てないかな?」と考えてみるのです。

ちなみに、たとえに出されることがいちばん多いのは、ペットボトルの水ではないかと踏んでいます。それは会議の席にたいてい置いてあるからです。

「たとえばこの水なんですけど、ラベルを隠したらどこのものかわからないですよね?」
「これってただの水ですけど、昔はこんなものが売り物になるとは思ってなかったですよね?」

など、広告クリエイターあたりがおそらく5万回くらいはたとえに出しているはずです。

ぼくはテレビや映画を観ていて「これって、あれに似てるな」と思ったときはメモをとるようにしています。

昔、未開の地の部族に会いに行くドキュメンタリー番組を観ました。スタッフが部族に会いに行くとき、とにかく部族の言葉で「こんにちは」とあいさつをすることが大切だといいます。そうしないと敵とみなされて攻撃されるのだそうです。

そこでぼくはこう思いました。「これ、会社であいさつしない人に敵意を抱くのと似てるな」。そして「あいさつしないと敵とみなされる」というようにメモをするのです。

こうしてメモしておけば、あいさつについて何かを書くときに使えます。「あいさつは大切だと思います」だけだと「知ってるよ、バカ」となります。でも「未開の地の部族でもあいさつをしないと敵とみなすそうです。あいさつは世界共通の仲よくなるツールなのでしょう」のように書けば説得力が増し、それがオリジナリティになるのです。

 

身体感覚を伴う表現をする

【目指す砂丘にたどりつけたのだから、これでいい。男は水筒の水をふくみ、それから口いっぱいに風をふくむと、透明にみえたその風が、口の中でざらついた。】

これは安部公房の『砂の女』の一節です。

昆虫採集に出かけた男が砂丘にたどりついたときの描写なのですが、砂の混じった気持ち悪い空気感がダイレクトに伝わってきます。この身体感覚とともに読者は不気味で不快な砂の世界に入っていきます。

ちょっとこれは要注意の文なのですが、

あなたはアルミホイルを口に入れ、奥歯でキシキシと嚙んでみました。

と書かれていたら、本当に嫌な感じになりますよね。身体感覚が伴うと、ダイレクトに体が反応するので、感情移入もしやすくなります。

「他にいい表現がないかな」と思ったら、身体感覚を伴うような表現を探してみましょ
う。たとえばこんなぐあいです。

・その金額の高さにすごく驚きました。
→その金額を見て目が飛び出そうになりました。

・本を開くとその言葉を偶然見つけ、ものすごく感動しました。
→本を開くと、ある言葉がいきなりぼくの胸ぐらをつかんできました。

読めば体のどこかがもぞもぞするような表現を入れてみると、おもしろい文章に近づけることができるはずです。

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