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社長と出張、ホテルは同室…「退職代行サービス」に頼らざるをえない実態



2020年09月05日 公開

清水隆久、増森俊太郎、吉田名穂子(弁護士法人川越みずほ法律会計)

退職代行サービスに寄せられる相談の実態とは?
※画像はイメージです

近年、その存在が広く認知され始めた「退職代行サービス」。会社や仕事で苦しむ多くの人が続々と駆け込んでいるという。

「会社を辞めたいけど、どうしても辞められない」という相談が跡を絶たず、日本ではまだまだ「辞めると申し出ること」自体に高いハードルが存在することを証明している。

本稿では、退職代行サービスを請け負う弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士たちによって執筆された新著『退職代行を使う前に読む本』より、実際に対応した多くの事例のなかから印象深かった案件に触れた一節を紹介する。

※本稿は清水隆久,増森俊太郎,吉田名穂子共著『退職代行を使う前に読む本』(インプレス刊)より一部抜粋・編集したものです。

 

あだ名は「バカ」。止まらぬLINEいじめに、丸刈りの強制まで…

「職場のLINEグループでいじめられていて、もう限界です」

20代の営業マンのCさんからメールがあったのは、3月の終わり頃でした。詳しくお話を聞くと、なんと入社したときからずっとLINEでいじめを受けていたというのです。

彼のあだ名は「バカ」。日常的に「さっさとしろ」「しばくぞ」などの暴言が、社員のグループLINEで、連日連夜繰り広げられていました。毎日お昼ご飯を食べている姿をアップさせられて、同僚や上司たちの笑いものにされる日々が続きます。

「坊主にしろ」と命令されて、拒否できずに坊主にすると、「まだ長いからもっと切れ」といわれて再度切った、という出来事もありました。これだけでも耐えがたいのに、さらに長時間労働も重なって、Cさんはうつ病を発症。

退職代行だけでなく、残業代請求とパワハラによる慰謝料請求も行い、労働審判で500万円を超える未払い残業代や慰謝料の支払いを命じる審判を勝ち取りました。

本書を執筆している今、Cさんは元気に別の仕事に就いています。私たちがこれまでお手伝いした方の中でも、一番元気になりました。当時の暗い表情とは別人のように明るくなり、生き生きと働いています。

余談ですが、あるときCさんに退職したくてもできなかった当時の心境を聞いてみました。すると、こんなふうに答えてくださったのが印象的でした。

「当時はあれが普通だと思っていて異常なことだって気づけなかったんです」

「すごく苦痛だけど、どの会社だってこんなものなんだと思っていました」

これはCさんだけではなく、多くの方に共通しています。皆さん、感覚が麻痺してしまって、異常であることがわからなくなっているのです。だから、「辛いな」と思ったら、まずは弁護士などの専門家に相談をしてみてください。

 

社長の出張に同行で「ホテルの部屋が同室」

セクハラを理由に退職代行を依頼したのは、社長秘書のDさんです。彼女が社長の出張に同行したところ、ホテルの部屋は1つしか予約されておらず、同室での宿泊を強要されたというのです。彼女は、それだけは耐えられないと部屋を出たそうです。

Dさんは日頃から社長に食事へ誘われていて、不本意ながらも応じていたそうです。はじめて誘われたときは断れたのですが、それからも何度も誘われて断りにくくて応じていたとのことでした。

Dさんが会社に退職を申し出ると、社長は開き直って「俺はセクハラなんてしていない」「俺のどこがセクハラなんだ」と恫喝する始末。退職にも応じてもらえず、助けを求めて退職代行を選択されたのです。

Dさんは私たちの介入によりあっけなく退職することができました。慰謝料請求も検討したのですが、Dさんは「辞められたらそれでいいから」と、慰謝料請求まではせず、今はセクハラがない新しい環境でのびのびと働いています。

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