1. PHPオンライン
  2. 社会
  3. 【対談】養老孟司×井上智洋「これからは“古い産業”へ人手が逆流する」

社会

【対談】養老孟司×井上智洋「これからは“古い産業”へ人手が逆流する」

養老孟司(解剖学者),井上智洋(経済学者)

2020年11月14日 公開 2022年06月27日 更新

 

「誰が食わせてくれてるんだ?」から始める経済の議論

【養老】別にAIが登場しなくても、これまで日本はしょっちゅうそういう帳尻合わせのための運動を起こしてきたんですよ。米騒動や百姓一揆がそうです。あれは、俺たちは食えないんだって、かなりギリギリの線だったと思います。

そういう行動を起こすのって、当然の権利でしょう。だって、誰がどのくらい困ってるかって、外から見てもわからないもの。結局、国の収支が見えてきたら、あとは帳尻を合わせて足りない人のところに回す分だけを「持ってる人」から取るってこと。要は「誰が持っていってるんだよ?」という話でしょ。

【井上】「誰が持っていってるんだよ?」を見える化すると。

【養老】そうそう。逆に言えば「誰が食わせてくれてるんだ?」と言っているんです。僕はずっと若い頃に、経済学者の竹中平蔵さんに聞いたことがあります。「俺を食わしてくれてるのって、実質誰なんだ?」って。それは、きっと他の人に違いないと。

そしたら竹中さん、さすがに経済学者だなと思ったけど、供給側のGDPの中で、実質的に新たな価値を作り出している額が高い業種を挙げて、何業は何%だと数字をパッと出していましたね。霞が関で会合ばかりやってたって、国民のためになってませんから(笑)

【井上】確かに、長い会議よりもそちらの方が経済学者の仕事ですね(笑)

【養老】その上で、今の段階で日本がどのくらい外国に借りていて、どのくらいのものを売って、つまり仕事としているのか。国としての仕事の総額というのは、どのくらいあるんだろうというのを把握してないと、危ないよね。

今後AIで仕事が減るといっても、そこをきちんと把握していなかったら、再分配なんてできっこないんだから。そういうことを誰が考えるのかな?と思うわけね。政府や省庁は、元来、そういうことをするべきでしょう。

アクセスランキングRanking

前のスライド 次のスライド
×