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9億人分の食料が足りない…コロナ禍の陰で危機的な食料問題

井出留美(食品ロス問題ジャーナリスト)

2020年12月25日 公開 2022年10月25日 更新

9億人分の食料が足りない…コロナ禍の陰で危機的な食料問題

コロナ禍が世界を席巻した2020年。ただ、新型コロナウイルス感染者が12月7日現在で6700万人であるのに対し、極度の食料不安を抱える人は2億7000万人に上り、2019年末より1億2100万人増加した。

「極度」とまでいかなくても、十分に食料を確保できない人は9億4000万人に上る。食料危機こそ、世界最大の問題といえるのではないだろうか。

 

絶対的貧困層は7億2900万人――2020年、悪化に転じる

現在、食べ物が十分にない人がどれくらいいるのだろうか。たとえその国の食料の量が十分でも、経済的困窮者は食べ物を入手することができない。

2020年10月7日、世界銀行(The World Bank)が発表した推計によると、1日1.90米ドル(約200円)未満で暮らす絶対的貧困2020年末までに7億2900万人となる見込みだ。世界人口のうち9.4%を占める。

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)が発生するまでの二十数年間、貧困は徐々に改善傾向を見せていたが、2020年、悪化に転ずることになる。

世界銀行が国際的に統一した方法で調査を始めて以来、貧困の増加は最も大きい結果となる。SDGsのゴール1「貧困撲滅」の達成は、残念ながら遠のいてしまった。

 

十分に食料を確保できない人は、9億4000万人

国連WFP(国連世界食糧計画)は、栄養不足人口を世界地図で色分けして示した「ハンガーマップ」を発表している。2019年末からは、これをタイムリーに、ライブで見られるようになった。

2020年10月9日現在、十分に食料を確保できない人の数は9億4000万人と表示されている。

2020年7月13日、FAO(国連食糧農業機関)は「世界の食料安全保障と栄養の現状」2020年報告を発表した。

当日にFAO駐日連絡事務所が発表したニュースリリース「飢餓と栄養不良の増加傾向続く 2030年までの飢餓ゼロ達成危ぶまれる 国連の報告書」によれば、

「2019年に約6億9000万人が飢餓に陥ったと推定され、2018年からは1000万人、過去5年では6000万人近くの増加」とある。

「ハンガーマップ2019」によれば、世界人口の9分の1にあたる8億2100万人に十分な食料がない現状であるという。前述のFAOの2019年の数字より多い。

国際農林水産業研究センター(JIRCAS:ジルカス)の白鳥佐紀子さんに伺ったところ、ハンガーマップの8億2100万人は、2019年までの計算方法で計算した数字とのこと。

「6億9000万人」は2020年に若干計算方法を変えた(中国を含む多くの国のデータを更新した)ため、少なく見えるが、2014年から緩やかな上昇傾向にあるのには変わらないそうだ。

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極度の食料不安を抱える人は2億7000万人

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