今の時代、強いだけでは部下はついてこない。でも、優しいだけではナメられる……。
真面目なリーダーならば、誰しも一度はこの問いにぶつかったことがあるだろう。では、「できるリーダー」はどうしているのか?
接客・サービス業の現場リーダーを数多く見てきた船坂光弘氏に解説してもらった。
※本稿は、船坂光弘 著『接客・サービス業のリーダーにとって一番大切なこと』(PHP研究所)の一部を抜粋・再編集したものです。
結果を出したのはどちらのリーダー?
仕事柄、様々なリーダーにお会いしてきましたが、どんな業種でも「結果にこだわり、結果を厳しくメンバーに求める」リーダーと、「調和を優しく求める」リーダーとに分かれます。
果たして、どちらのマネジメントが結果を導く上で効果的なのでしょうか?
私がサポートさせていただいている、全国20店舗を展開するウェディング系の企業でも、各店舗に訪問して店舗メンバー全員と定期的に研修をしていると、各店舗の店長のリーダーシップのタイプが見えてきます。
A店舗の店長は、強いリーダーシップを発揮してチームを鼓舞しながら、結果を厳しくメンバーに求めるタイプの店長です。
B店舗は、新米店長で、「みんながいてくれるおかげで私は店長ができている」といった感じで、優しくはありますが、どこか頼りないタイプの店長です。
この両極端の店長のマネジメントを数年見ていたところ、最初は厳しい店長のA店舗が売上目標を達成しており、優しい店長のB店舗は未達に終わっていました。
強いリーダーは「言われたことしかやらない部下」を生み出す
しかし、2年後に異変が起きました。
2人の店長のマネジメントスタイルは変わっていないにもかかわらず、A店舗は思ったほど売上が伸びずに目標未達に終わるようになったのに対し、B店舗は大きく目標をクリアするようになったのです。
なぜだか分かりますか?
A店舗は、店長の強いリーダーシップで、求められた結果に部下は従順に応えて最初は結果を出していました。しかし、言われたことしかやらない部下を作り、部下も結果ばかりを求めるリーダーに不満を持ち始め、結果は頭打ちになりました。
一方、B店舗は、頼りないリーダーで最初はメンバーも戸惑いがありましたが、店長の優しさに「自分たちが店長を守らなければ」「私たちでこの店舗の売上目標を達成させなければ」と思うように。
メンバー全員が店舗運営を自分事として受け止め、使命感を持って自分の力を最大限発揮するようになり、大きな成果を出すようになったのです。
軍隊のような統率を目指す時代は終わった
この組織以外にも似たケースを、私は何度か見てきています。
「結果を厳しく求めるリーダー」のマネジメントは、未熟な組織を引っ張る際には効果的です。しかし、メンバーの力を最大限生かせないことが多く、ある程度までは結果を導くことができるのですが、その後に頭打ちになる傾向があります。
一方、優しさや協調性にこだわるリーダーは、メンバーを頼り、部下からの提言を受け入れて、部下がやりたいことを支援するため、メンバーは使命感を持って最大限の力を発揮する傾向があります。
強いリーダーシップで軍隊のように統率を図れば成果を上げられた時代は終わりました。変化の激しいこれからの時代は、第一線でお客様に触れているメンバーの叡智を結集するマネジメントが求められています。
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初めて部下を持ち、部下との関係を悪化させてしまった話