歴史街道2月号書評から
2011年01月07日 公開 2022年08月17日 更新
『日露戦争諷刺画大全』
飯倉 章 著
一枚の絵が語る日露戦争の実像
芸者(日本)が熊(ロシア)を追い詰めて籠に入れる...。本書は世界各国で描かれた日露戦争に関する諷刺画658点を収録・解説したもの。ユーモアに満ちた絵を楽しみつつ、各国の日本に対するイメージとこの戦争の捉え方が如実に分かる。(水)
『南海の翼 長宗我部元親正伝』
天野純希 著
若手注目作家、土佐の風雲児に挑む
土佐の「出来人」と呼ばれ、四国の覇者となった長宗我部元親。著者はこの元親を、息子や家臣たちとの軋轢に悩む一人の人間として魅力的に描き出す。元親の内意を受け、主君とお家のために動く近習・久武親直の苦悩も胸に迫る本格戦国小説。(後)
『黒鉄歴画 龍馬』
黒鉄ヒロシ画・文
黒鉄歴画が、カラーで味わえる!
黒鉄歴画の真骨頂とされる『坂本龍馬』が、電子書籍としてオールカラーで甦った! 著者自らが改めて彩色を施し、美しく繊細な色使いが作品に新たな息吹を吹き込んでいる。紙とは異なるデジタル版ならではの味わい、一度ご賞味あれ。(村)
※iPad版のみ、iTunes Storeで発売中
『京の古寺 歴史探訪』
村井康彦 著
奥の奥に秘められた名刹の魅力
大徳寺の茶面、妙心寺の算盤面、東福寺の伽藍面...。京都の名刹にはいずれも、歴史の中で育まれた独特の文化がある。本書は、中でも一味違った厳選四十寺の魅力を、京都歴史文化研究の泰斗が独自の視点で探る。異色のお寺文化エッセイ。(佐)
歴史街道 2011年2月号
「徳川家に輿入れして数年経つというに、いまだ世継ぎができぬとはのう」。三度目の結婚で夫・秀忠よりも年上の正室・江に、そんな陰口が囁かれます。しかし、江には固く秘めた思いがありました。すなわち「ここを自分の生きる場所と定め、父母の血を伝える」というものです。その原点には、炎上する北ノ庄城と運命を共にした母・市の、凛とした姿がありました。「自分には帰るべき実家はない。ならばここで、浅井と織田の血に恥じぬ生き方をしよう」。それこそが母が身をもって示してくれた生きる上での覚悟であり、江だけでなく、姉の茶々(豊臣秀吉側室・淀)や初(京極高次正室)もそれぞれが受け止めたものでした。乱世を気高く生きた浅井三姉妹の誇りを描きます。第二特集は「秋風五丈原」です。