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「アメリカなのに英語禁止」のコミュニティで育った少女のその後



2021年04月06日 公開

デボラ・フェルドマン(訳:中谷友紀子)

 

「自分が求める生き方」を実現するには

安いペーパーバック版の『自負と偏見』を買うことにした。一行目に心をつかまれた。

"広く知られた真理のひとつに、こういったものがある。財産のある独身男性なら、妻を求めているにちがいないというものだ"

それを読んだだけで、どんなことが書かれているかわかった。結婚とそこに至る仕組み以上に興味のあるテーマはなかった。婚約者のいない若い娘にそういったことを教えてくれる人が周囲にはいなかったからだ。自分の番が来るまでなにも知らずにいるのは嫌だった。この本が参考になるかもしれないと思った。

『自負と偏見』は、とても楽しい読書体験を与えてくれた。それまで読んだことがないほどフォーマルでエレガントな文体で書かれているのに、とても刺激的だった。絶妙に鋭いフレーズがちりばめられ、はらはらドキドキした。

ヴィクトリア朝以前のイギリスに触れるのは初めてだった。母がイギリス出身でも、時代はまるで違うので、最初はとっつきにくいかと思ったけれど、すぐにベネット家の姉妹と自分の世界に共通点が多いことに気づいた。

そう、わたしは『自負と偏見』の登場人物とあまり変わらなかった。わたしの将来も、いかに有利な結婚をするかにかかっている。わたしのコミュニティも地位と評判を重んじ、些細なことでそれを比べあう。イギリスの上流階級が経済力を重視するように、わたしの世界では魂の価値を競う。

エリザベスの考えや言動からなによりも読みとれるのは、絶えず感じている焦燥だった。彼女もきっと、男性がすべての力を握り、女性は選ばれる側に甘んじるしかないことに憤りを覚えているのだ。知性とウィットを備えた女性だから、条件のいい男性の気を引こうと相手に媚びることなど、プライドが許さないにちがいない。

ほかの女性たちとは違ってエリザベスには自立心が感じられ、わたしはそこに惹かれた。彼女と自分の運命が深く結びついているような気がして、結末が気になってたまらなかった。

わたしは寸暇を惜しんで『自負と偏見』を読みふけった。授業中も真面目にノートをとるふりをしながらうわの空で、ネザーフィールドの田舎町とそこに暮らす人々の顔を生き生きと思い描いていた。

押しつけられた縁談を断り、自分の生き方を求める結婚適齢期の女性の物語。まさにわたしにぴったりの本だった。昔はどこもわたしのコミュニティと似たような環境で、同じように不満を覚えていた人がいたのだ。

エリザベスがそばにいて教えてくれたらいいのにと思った。本のなかで鮮やかにやってのけた反逆を、どうすれば実現できるかを。

 

自分の居場所を見つけられる

以前のようにゼイディに部屋を調べられることもなくなり、気兼ねなく本も読めた。<バーンズ&ノーブル>に行ってお給料でハードカバーも買えるようになった。真っ先に買ったのは、どれも図書館で読んで気に入った本だった。

『若草物語』の新装版は数年前に借りたぼろぼろの本とは大違いだった。わたしはそれをドレッサーの最下段のスリップの抽斗に大事にしまった。以前に読んだときは元気な姉妹たちの茶目っ気が楽しかったが、あらためて読みなおすと、自分らしさを追い求めるジョーの姿に胸を突かれた。

ジョーは時代にうまくおさまりきれず、暮らしや運命を自然に受け入れられない。考えてみれば、子供時代に読んだ本の主人公はみんなそうだった。誰もが居心地の悪さに絶えず苦しんでいた。いい子に作り変えようとする周囲のプレッシャーは、身体に合わない服を無理やり着せられる窮屈さに似ている。

この本から得られる希望があるとすれば、いくらか折り合いをつければ、誰もが居場所を見つけられるということだ。ずっと居心地が悪かったわたしも、自分の場所を見つけられるかもしれない。

わたしもジョーのように成長し、変わりもしたから、自分らしさを捨ててしまわなくても、ちゃんとした大人の女性になれるかもしれない。愛と結婚によって、ジョーはずっとなるまいとしていたレディになった。わたしの性格も魔法のように穏やかになるのだろうか。

 



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