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アメリカ国民の4割が進化論を否定!?…政治をも動かす「宗教の力」

2020年03月04日 公開

西山隆行(成蹊大学法学部教授)

ヘルシンキサミットでのトランプ大統領(写真:ロシア大統領府公式サイト www.kremlin.ru)
ヘルシンキサミットでのトランプ大統領(2018年7月16日)
(写真:ロシア大統領府公式サイト www.kremlin.ru)

アメリカ大統領選挙が近くなると、日本でも、アメリカの宗教右派や福音派(エヴァンジェリカル)と呼ばれる人々が強い政治的影響力を持っているという報道がなされる。

福音派とは、聖書の言葉は神の言葉だとして、それを一言一句信じる原理主義者の一部だと紹介される。そのような説明を聞いて、不思議な感覚を持った人もいるのではないだろうか。

アメリカでは歴史的には魔女狩りや大覚醒、禁酒法など、宗教に起因する問題がしばしば発生していたが、それは過去の逸脱的な現象というわけではない。

世界の科学をリードするアメリカの政治で、宗教問題が大きな位置を占めるのはなぜなのか。

本稿では、アメリカにおいて宗教に関連づけて議論される諸問題について解説する。

※本稿は西山隆行著『格差と分断のアメリカ』(東京堂出版刊)の内容を一部抜粋・編集したものです。
 

進化論をめぐる論争

宗教と科学技術の問題の相克を示す一例が、進化論をめぐる論争である。進化論は人間はサルから進化していったという考え方だと一般的には理解されており、日本でこの説に異を唱える人は少ないだろう。

だが、アメリカでこのダーウィンの進化論を信じる人は、国民の6割程度にすぎない(調査によってはもっと少ないこともある)。

進化論を否定する根拠としてあげられるのは、旧約聖書の中の、人間はアダムとイブの子孫だという記述である。

進化論の是非をめぐって20世紀初頭にモンキー裁判とも呼ばれる訴訟が行われた。

これは、進化論を教えることが禁じられていたテネシー州のデイトンで、高校教師のジョン・スコープスが進化論を教えた廉(かど)で告発されて話題となった裁判である。アメリカを代表する大物法律専門家が聖書をめぐって論争を繰り広げた模様は、ラジオ中継されて大いに注目を集めた。

今日のアメリカでも進化論をめぐる議論は活発である。日本と違い教科書検定制度が存在しないため、教科書の内容は多様性に富んでいる。

基礎教育を掌(つかさど)る学校区の長を選ぶ選挙では「私が当選すれば進化論について記した教科書を使わない」とか、「『進化論は一つの仮説にすぎず、その正しさが科学的に証明されているわけではない』と記したパンフレットを配布する」というような公約が掲げられることもある。進化論について記した教科書を利用している地域で、在宅教育(ホーム・スクーリング)を認めるよう運動する人々もいる。

アメリカでは子どもに初等中等教育を受けさせることは義務だとされているが、子どもが学校に通わなければならないと定められているわけではないので、最低限の条件を満たしていれば自宅で教育を行うのも可能だからである。

アメリカでは、知的設計説(インテリジェント・デザイン説)と呼ばれる説が教えられている地域もある。生物の進化を考えると、科学では説明できないような複雑さが存在する。

そのようなものを創造することのできる圧倒的な知性を持つ存在が生物や世界をつくり出したのだという説であり、この知性=神であるとそれとなく仄(ほの)めかされている。

日本を含む多くの国では、科学教育と宗教は別個のものと位置づけるのが当然とされるが、アメリカではそうではないこともある。

世界で最も進んだ科学教育が行われているアメリカで、このような議論が展開されている地域があるのは興味深い。

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