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「教師の勤務時間ダントツ世界一」でも保護者は不信感…教育現場に潜む“4つの大問題”

妹尾昌俊(教育研究家)

2021年06月04日 公開 2021年07月09日 更新

 

保護者と学校との亀裂が拡大している

3番目の問題は、保護者からの信頼の低下です。私が2020年5月に保護者向けに実施したアンケートでは、「休校中の学校からのコミュニケーションや働きかけが少なく(または満足できるものではなく)、信頼感が下がったかどうか」について聞きました。

結果、公立小・中学校の保護者は、Yes・Noがくっきり分かれました。公立小の保護者の約50%、公立中の保護者の約56%が「信頼感が下がった」と回答しました。

国立・私立学校では予算や家庭環境などで公立とはちがうので、一概に比較はできませんし、回答数も少なかったのですが、公立校とはかなり差があります。学校への不満が高まり、信頼が落ちている原因は新型コロナの影響で、保護者もストレスフルな毎日だったから、という事情もあったことでしょう。

ですが、ならば校種を問わず、もっと似た結果になりそうなものです。やはり学校ごとの対応の差が、保護者の不信という結果にもあらわれているのではないでしょうか。

 

疲弊する現場、教師の仕事はまだまだビルド&ビルド

4点目は先生たちはとても忙しいという問題です。これはコロナ前からも深刻な問題で、日本の小学校と中学校の教員の勤務時間は他国を大きく引き離して世界一長いです(OECDのTALIS調査、2018年)。

国際比較データはありませんが、高校の先生も相当多忙であることは確かです(部活動が長いところもあれば、進路指導関係が大変なところなどさまざまです)。

この背景にはさまざまな事情がありますが、ひとつは近年の学習指導要領改訂で教える内容は増え続けた結果(教科書も厚くなる傾向)、授業とその準備にも時間がかかることがあります。

またICTの導入も遅いので、採点や事務作業の効率化が進んでいない学校も多いです。同時に部活動をはじめ、授業以外の負担も重いためです。

学校の働き方改革の動きが国でも自治体でも少しずつ始まったわけですが、新型コロナウイルスの影響で「働き方改革なんて言っていられる状況じゃない」というムードの学校もかなりに上ったようです。また副校長・教頭や養護教諭らもコロナ関連業務が多くなり、一層多忙になっています。

たとえば養護教諭向けの調査によると、コロナ対策は養護教諭にとって「きわめて大きな負担となっている」という回答が小中高ともに5割前後に上りました(「負担になっている」との回答も4~5割)。

そうしたなかで、職場でメンタル不調の人に気づける、気遣える人も少なくなっていると考えられます。このようなデータから示唆されるのは、先生たちの心の健康はコロナ後に一層危なくなっている可能性が高いということです。そしてこれは、確実に授業の質や子どもたちへのケアにも悪影響を広げます。

 

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