家の価格は何千万円単位で非常に高額だが、値切れる場合もあることをご存じだろうか?
住宅ジャーナリストの日下部理絵氏が、家知識ゼロ編集者の梅田直希氏に家に関するあれこれを説いた『すみません、2DKってなんですか?』より、家を検討するときの注意点から価格交渉術の話まで、抜粋・一部編集してお届けする。
※本稿は日下部理絵 ・ 小林義崇 著『すみません、2DKってなんですか?』(サンマーク出版刊)より一部抜粋・編集したものです。
「住宅展示場」は実物と違うことも
【日下部】新築物件を買うならモデルルームや住宅展示場、中古物件を買うなら不動産屋さんを訪れるのが基本の手順ですが、住宅展示場に行ったとき注意してほしいことがあります。
【梅田】なんですか?
【日下部】「見た目のきれいさ」や「スタッフの対応のよさ」「雰囲気のよさ」に流されないでください。展示の家はモデル。実際に購入する家と「まったく同じ」ではないですから。
【梅田】え、見学したのと同じ家に住めるんじゃないんですか?
【日下部】モデルルームと実際に購入する物件は、別物です。立地や日照条件、周辺環境などの外部状況が異なります。モデルルームが日差しに恵まれた角部屋であっても、実際の部屋は配置が違ったり間取りが異なったりすることもあります。それに実際は付いていない家具・家電も展示されているので、魅力は差し引いて考えなければなりません。
【梅田】モデルルームの「今からここですぐに住めます感」は、演出されたもの……
【日下部】内覧マニアの人は、そのあたりを差し引いて物件を厳しく吟味しています。実際、多く見れば見るほどカンが働いて、気づきも増えます。
【梅田】内覧マニアの人が気づくポイントってどこですか?
【日下部】わかりやすいのは「売り急いでいる感」。販売期間が長くなってきたり、決算期が近づいてきたりすると、売主側は早く手放したくてたまらない。モデルルームの人件費や、抱えている物件の固定資産税などの固定費がかかってくるので。
【梅田】押し売りみたいになるんですか?
【日下部】というより、買い手にとって魅力的な条件をどんどん出してくれることがあるんです。「ちょっと値下げします」「家具付けます」という口説き文句です。
【梅田】それは心を揺さぶられますね。
【日下部】だからといって飛びつかず、検討する姿勢が大事です。目先の安さ・きれいさに釣られてはいけません。
「申込書」と「契約書」は違う
【梅田】住宅展示場って、営業マンに契約書へのサインを迫られたりするんですか?
【日下部】いえ、モデルルームでいきなり契約書にサインということは通常ありません。せいぜい「申込書」への記入くらいです。
【梅田】え、いきなり申し込み?
【日下部】申込書といっても、買い手候補が複数いた際に、優先権を少し与えられる程度のものです。売買契約を結ぶ前なら、電話などでキャンセルできますよ。
【梅田】1つの物件に対して、買いたいという人が同時に出ることがあるんですか?
【日下部】はい。人気物件なら、広告を出してから数日〜1週間で買い手が殺到します。そういうときは、「住宅ローンの仮審査が済んでいる」など、条件のいい人に優先的に決まります。
【梅田】そうなると、「家を選んでいる」のに、今度は自分が「いい買い手かどうか」選ばれる立場になるということ?
【日下部】まさに。ほかの買い手候補が出てきた瞬間に、情勢が変わるんです。たとえば知人のOさんは、最初の買い手候補だったため「40万円の値引き」をもちかけていたんですが、二番手の買い手候補が出てきたので、その値引き交渉をやめました。
【梅田】……すみません、家って値切れるんですか?