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「それ、おかしくないですか」と素直に言えなくなる会社の危うさ



2021年09月14日 公開

石井遼介(株式会社ZENTech 取締役)

石井遼介

最近耳にすることが増えた「心理的安全性」。答えのない時代に、チーム・組織において対話や多様性を活かした集合知を武器にするためのキーワードとして、重要視されている。

しかしその実、心理的安全性のあるチームや組織はまだまだ少なく、渇望する人が絶えない。なぜ心理的安全性のあるチームや組織をつくることが難しいのだろうか? その障害となる阻害要因や構築するためのポイントを、2020年に上梓した『心理的安全性のつくりかた』が15刷7.5万部を記録し、「HRアワード2021 書籍部門」にも入賞した心理的安全性の研究者、石井遼介氏から学ぶ。 

※本記事は、石井遼介 著『心理的安全性のつくりかた』(日本能率協会マネジメントセンター)より、一部を抜粋編集したものです。

 

「一見すると普通のこと」が難しい

「それ、おかしくないですか」
「私はこうした方がいいと思います。なぜかと言うと……」
「ちょっとわからないので、教えてもらえませんか?」

このように率直に意見を言い、また質問をする。それだけのことですが、これがチームの成果を左右するくらい、実は重要なことなのです。

「心理的安全性」とは、このように組織やチーム全体の成果に向けた、率直な意見、素朴な質問、そして違和感の指摘が、いつでも、誰もが気兼ねなく言えることです。

一見すると普通のことですが、組織・チームでこれを行うのはとても難しいのです。

ただ率直に発言することの、何が難しいのでしょうか?

自分が上位役職者で、実績も経験も十分で、直近の業績が良ければ、率直に意見を言うことは、簡単なことです。

しかし、仕事人生を振り返ってみてください。

新人の頃、何となく違和感があったけれど「相手はベテランの先輩だから…」と指摘できず、後で大きなトラブルになりかけて、「やっぱり自分の違和感は正しかった」と感じたことなどはなかったでしょうか。

上司の指示がよくわからず、しかし質問をしづらくて、やるべき事が曖昧なまま見当違いの方向で努力して、後で怒られたこともあるのではないでしょうか。

率直に意見を言うこと、質問をすることが、状況や立場にとっては、とても難しかったことが思い出せるでしょう。

チームの一人一人が、率直に意見を言い、質問をしても安全だと感じられる状況、つまり心理的安全な状況をつくることは、実は難しいのです。

そして、この人々が率直に話せる状況を作ることが、激しく変化し続ける時代の組織とチームの未来をつくるために、重要な仕事なのです。

 

対人関係のリスクが心理的安全性を阻害する

ハーバード大学教授のエイミー・C・エドモンドソンは、1999年に「チームの心理的安全性」という概念を打ち立てました。これまで8000回以上引用されたその論文の中で、「チームの心理的安全性とは、チームの中で対人関係におけるリスクをとっても大丈夫だ、というチームメンバーに共有される信念のこと」だと定義しました。

これは一言でいうと、「メンバー同士が健全に意見を戦わせ、生産的でよい仕事をすることに力を注げるチーム・職場のこと」です。心理的安全性という概念に関係なく、当然のように重要なことだと思われたかもしれません。

しかし、ほとんどの職場に、自然と生じてしまう「対人関係のリスク」が「健全に意見を戦わせ、生産的でよい仕事をする」ことを阻害してしまうのです。

だから組織の誰もが生産的でよい仕事をすることを願っていたとしても、組織・チームはおのずと心理的安全ではないチームになってしまいます。

それでは、人々はチームとして働く中で、どんな時に「対人関係のリスク」を感じるのでしょうか。

対人関係のリスクとは、自分の発言やアウトプットについて、チームの他のメンバーから「こんな風に思われるかもしれない」とか、「こういう仕打ちを受けるかもしれない」という、「良かれと思って行動しても、罰を受けるかもしれない」リスクのことです。

「別に、ウチのチームでは罰なんて与えていない」と思われるかもしれません。しかし、ここでいう罰とはちょっとしたもので、その一つ一つは小さな行動なのです。

・率直に意見を言うと、空気が壊れたり、自分が嫌われたりするリスク(だから、言わなかった)

・お客さまの要望をきちんと理解して提案するために質問をしたいが、聞くと「何も知らない人だ」と思われるリスク(だから、聞いたほうが成果が出ただろうけれども、聞かなかった)

・現場から離れて長い上司の感覚と、現場を見てきている自分の感覚では、かなりの乖離があるので、率直に意見をしたいが、失礼な部下だと思われるリスク(だから、今回も上司の方針にしたがった。後日「やっぱり」と思う出来事があった)

エドモンドソン教授は、大きく四つのカテゴリ「無知」「無能」「邪魔」「否定的」だと思われるリスクを、対人関係のリスクとして整理しています。

・「無知」だと思われたくない→必要なことでも質問をせず、相談をしない

・「無能」だと思われたくない→ミスを隠したり、自分の考えを言わない

・「邪魔」だと思われなくない→必要でも助けを求めず、不十分な仕事でも妥協する

・「否定的」だと思われたくない→是々非々で議論をせず、率直に意見を言わない

対人関係のリスクとはいま見てきたように、「チームの成果のためや、チームへの貢献を意図して行動すると、罰を受けるかもしれない」という不安を感じている状況のことを言います。

行動すると、罰せられるのだったら、行動しないほうがマシ。だから、このようなリスクに怯える心理的「非」安全な職場では、いつのまにかメンバーは必要なことでも行動しなくなってしまうのです。

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