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社会

なぜ理系に進む女の子は少ないのか...15歳の発明家が問う「科学分野の男女格差」

ギタンジャリ・ラオ(著)、堀越英美(訳)

2021年12月27日 公開

 

理系女子が少ない5つの原因

なぜ女の子は男の子に比べ、STEMのキャリアから遠ざかる傾向にあるのか。理由はたくさんあります。しかし女の子なのか大人の女性なのかによっても違うので、その理由を5つにしぼってみました。

1.孤立:私のようなタイプの女の子の多くはプログラミングキャンプに参加した経験がありますが、女の子はひとりかふたりしかいないことがあります。ここ数年で改善されてきたとはいえ、まだこの状況はよく見られます。プログラミングをしようとしない友人がいますが、プログラミングは女の子向きじゃないと思いこんでいるから、という以外に思いあたる理由はありません。

2.奨励されない:小学校時代、女の子は着せ替え人形の「アメリカンガール」のクラブに入るようにすすめられ、チラシをもらったことを覚えています。私はそんな人形があることすら知りませんでした。プログラミングクラブやSTEMクラブでも同じように女の子に向けてチラシが配られていたら、何人かは入ったことでしょう。

3.メディアでの描写:これまで見せられたサイエンスのビデオでは、たいてい科学者が男の子や男性として描かれています。地元の図書館で行われたサイエンスショーでも、いつも男性が科学の概念を説明していました。私自身はある程度の評価を得るまで、サイエンス系のメディアに出演したり、人前で科学について説明する機会はまったくありませんでした。こうした状況を変えるチャンスはあると信じています。

4.責任:STEM分野の専門職女性は、家事や子育てといった家庭での責任が重く、仕事に支障をきたす可能性があると考えられているために、大きな責任のある仕事を任せてもらえません。近年状況は変わってきていますが、一部では根強く残り続けています。とにかく、雇用主はすべての従業員に平等な機会をあたえ、職務遂行能力と才能のみにもとづいて責任を決定する必要があります。

5.賃金格差:6年生のとき、地元の Youth in Government(若者のための模擬国会)に参加して、男女の賃金格差についての議案を作成しました。男性が1ドル得られる仕事で女性は80セントしか得られないという賃金格差を終わらせる必要性について訴えたのです。

はじめてこのことをきいたときはゾッとし、母からその背景にある理由を説明してもらって、とても不公平だと思いました。賃金格差はSTEM分野を含む多くの業界で、今なお続いています。雇用者は、前職の給与をたずねてはいけないという法律を遵守し、従業員間で給与について話し合うことをさまたげず、交渉の余地のない平等な給与体系を提供する必要があります。

 

女性がSTEM分野にもたらす可能性

STEM分野で働く女性がふえれば、イノベーションはますます活性化し、創造性は最大限にのびるでしょう。科学者やエンジニアは、現代におけるきわめて困難な問題の数々を解決するために働いています。

女性の中にも、科学に多大な貢献をはたしたパイオニアがいます。ふたつの元素を発見したマリー・キュリーや、「CRISPR」を用いた遺伝子編集技術(訳注・侵入物のDNAを切断する微生物の適応免疫システムを利用して、遺伝子のねらった部分だけを編集する技術)を発明したエマニュエル・シャルパンティエとジェニファー・ダウドナといった女性の努力によって、科学は大きな飛躍をとげてきました。

女性がSTEMに関わらなければ、女性特有のニーズや経験が見すごされてしまうかもしれません。解決策にも、女性の声が反映されなくなってしまうでしょう。将来、私たち全員が男女の別なく同じようにあつかわれるようにすることは、私たちの世代の責務です。

私たち女子自身がSTEMにもっと積極的に関わったほうがいいのはもちろん、大人や男子たちには、私たちの味方となり、女子のスキルを尊重するという責務があります。女の子が安心してSTEMスキルに挑戦できる場を提供している組織のことは、とてもありがたく思っています。

一方で、女の子がSTEM分野に個人的な関心をよせ、イニシアチブをとることも同じくらい重要です。現在および未来の問題は、私たちみんなで解決する必要があるのです。

 

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