我慢よりも食行動の見直しを
過食は、脳内ホルモンの乱れによって引き起こされる「ニセの食欲」がおもな原因とお話ししました。
脳はストレスを感じると、幸福ホルモンである「セロトニン」の分泌を増やす糖質を欲します。ストレスは交感神経を活発にするので、副交感神経優位に戻すために、食べて胃腸の働きを活発にしたいという欲求が生まれるのです。
つまり痩せられない人は、脳内ホルモンが常に乱れている状態=心の問題を抱えている可能性が非常に高いのです。
ですからダイエットをはじめる前にまず、自分が抱えている問題を分析する必要があります。
ここで有効なのが、「行動療法」です。
厚生労働省のガイドラインでは、肥満症の治療として、食事療法、運動療法、行動療法という3つ治療方針が定められています。
このうち食事療法と運動療法は、一般的なダイエット法として広く知られています。みなさんがよく実施されているダイエットも、食事療法か運動療法、どちらも同時に行っていることも多いかもしれません。しかし、3つ目の行動療法を知る人は少ないのではないでしょうか。
行動療法とは、自分の食行動を見直すことです。
具体的には、まず体重や食事などを毎日記録してグラフ化し、ライフスタイルや食生活を客観的に把握・分析します。そして「食べ過ぎてしまうのはなぜか?」「どう対処すればよいのか?」というニセの食欲が起こる原因を探ります。
たとえば、「食べてないのに痩せない」と思っている患者さんに記録をつけてもらうと、自分が思っている以上に食べていたことが判明し、実行動と、自己認識がずれていたことに気づきます。
また、「会議がある月曜の前の晩は、ストレスでドカ食いしていた」「机の上にお菓子があると無意識に食べてしまう」などの食べ方のクセも見えてきます。
行動療法では、こうした「認識のズレ」や「食べ方のクセ」を把握することがポイントになります。
自分の食行動を知ると、ライフスタイルの中でどういう時に注意すべきかが見えてきます。「日曜の夜は食べ過ぎる傾向があるから、月曜の食事は軽めに済ませよう」とか、「机の上にお菓子があると無意識に手が伸びてしまうから、お菓子は机に置かない」など、対策をとれるのです。
こうして自分自身の食行動を客観的に把握して正しい対処をしていくことで、ダイエットは一気に成功へ近づきます。