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生き方

「恋愛はするが結婚はしない」ずるい男性の正体

加藤諦三(早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員)

2022年02月08日 公開 2024年12月16日 更新

 

「会社を辞めればいい」では済まない

この不安は極めて強烈な感情です。同様に、不安が及ぶ範囲と深刻さも、とてつもなく強烈です。

ですから、不安を抱えた人とそうでない人というのは、なかなかコミュニケーションが取れません。先ほどから述べているように、不安でない人から見ると、「なぜあんなことをするの?」と、相手が理解できないからです。

過労死のニュースが報じられた時、世の中の意見は必ず二つに分かれます。一方は「会社を辞めればいいのでは。会社は一つしかないわけではないし……」。もう一方は「その会社はけしからん」となります。

女性の多くは、ギャンブル依存症の夫やアルコール依存症の男性、あるいはワーカホリックの男性と別れられません。なぜか? 一人で新しい生活を始めることが不安だからです。

このように、不安か、そうでないかということは、我々の生き方、言動に大きく影響しています。先ほど「成功者のうつ病」「笑顔のうつ病者」と述べましたが、考えてみると矛盾を含んだ不思議な表現です。

 

都合のいい女性だから「好きだ」と口にする

テレンバッハというドイツの精神医学者が「メランコリー親和型」について説明しています。「メランコリー」というのは「憂鬱」です。

テレンバッハの説明によると、このメランコリー親和型の人たちも一人では生きられません。とにかく相手に尽くします。

世の中には質(たち)の良くない人がたくさんいます。例えば、ギャンブル依存症の男性にとって、メランコリー親和型の女性は恰好の標的です。自分に都合のいい女性だから、「好きだ」と口にするのですが、彼らを好きになる女性には、それが分かりません。

そして、結婚してしまうと、結局、心療内科に行くようになるのは、男性ではなくて女性のほうなのです。

不安な人の本当の感情は、無効化されると述べましたが、自分で自分が分からないので、相手のことも分かりません。なぜなら、不安な人は相手のことも見ていないからです。

ところが、反対にギャンブル依存症の男性は、「この女性が恰好の標的だ」とすぐに分かります。「俺の言うことなら何でも聞く」と感づくのです。そうやって察知し、「待っていました」とばかりに狙いを定めます。

「ずるさは弱さに敏感である」と覚えておいてください。

悪賢い男性は、自発的な感情で恋愛をして結婚するわけではありません。

一方、メランコリー親和型の人は相手に尽くして喜ばそうとしますが、そうするのは一人で生きていけないからです。一人で生きられないから相手に尽くすのであって、自発的感情に従って、相手が好きだから尽くしているわけではありません。

しかも、メランコリー親和型の人にとって、相手に尽くすということは意識レベルの話です。実は心の底では尽くすことを通して、逆に相手を縛ろうとしています。自分一人では生きていけず、不安で仕方がないため、尽くすことで無意識に相手を縛ろうとしているのです。

【著者紹介】加藤諦三(かとう・たいぞう)
1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。    

 

著者紹介

加藤諦三(かとう・たいぞう)

早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員

1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。

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