デジタル化が叫ばれて20年以上。ここへきて一転、「デジタルネイティブ」と呼ばれる若者世代に、レコード盤やインスタントカメラ、手書きのノートといったアナログな商品がウケている。デジタル全盛期のいま、彼らがアナログに魅力を感じる理由は何なのか。
CDの売り上げをアナログレコードが抜いた?
デジタルデバイスの普及により、今や手紙はメールにとってかわり、音楽にいたってはインターネットを使ったストリーミングサービスが主流となった。
電通デジタルの調査によると、コロナ禍をきっかけにデジタル化の流れは加速。サブスクリプションサービスや、オンライン対話サービス、キャッシュレス決済など、デジタルサービスの利用がさらに増加したという。
そんなデジタル全盛期のいま、アナログ的な商品がじわじわとヒットの兆しを見せている。アナログレコードやカセットテープの他、インスタントカメラ、手書きの手帳といった、昭和世代にはどこか懐かしい商品たちだ。
世界的に見てもその流れは顕著で、近年、アメリカやイギリスではCDの売上高をレコード盤が追い抜くという現象まで起きている。英ガーディアン紙によると、イギリスでは2020年、レコード盤の売上高が前年比30%増となる8650万ポンド(約132億円)に到達。この金額は1989年以来最大だという。
さらにアメリカレコード協会の発表によれば、2020年上半期のアナログ盤の売上は2億2310万ドル(約246億円)で、CDの売上は1億2990万ドル(約138億円)。実に倍近くの差をつけてアナログレコードの売上が増加している。
ファッションアイテムとしての「アナログ」
このアナログ回帰の流れ、牽引役を担うのは懐古主義的な大人たちかと思いきや、意外なことにアナログを知らない若者たちだという。
いわゆる「デジタルネイティブ」と呼ばれる世代で、物心ついたときからデジタル機器に慣れ親しんできた世代だ。
彼らがアナログに惹かれる理由は、おしゃれ、かっこいいといったファッション的な側面以外に、デジタルによって均一化された質感とは一線を画す、アナログならではの温かみや味わいにあるようだ。
レコードの持つ人間の耳には聴こえない高周波非可聴音までも含めることで生まれる音の広がり、インスタントカメラの不鮮明さが生むキッチュなフィルム感、それらは、ノスタルジックで感傷的、彼らが言うところの「エモい」という言葉に集約されている。