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大切だから離れてみる? 元ホームレスと野良猫の実話に学ぶ「愛情の示し方」

片平奈々子(PHPオンライン衆知編集部)

2022年02月25日 公開

大切だから離れてみる? 元ホームレスと野良猫の実話に学ぶ「愛情の示し方」


(c)2020 A GIFT FROM BOB PRODUCTION LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

映画『ボブという名の猫2 幸せのギフト』が、2022年2月25日(金)より全国の映画館で公開されます。

ロンドンを舞台に、ストリートミュージシャンとして生計をたてていたホームレスの青年と茶トラの野良猫ボブの友情を描いた物語『ボブという名のストリート・キャット』(辰巳出版)は世界30か国で出版され、シリーズ累計1000万部を誇るベストセラーノンフィクションとなりました。本作はボブシリーズより『ボブが遺してくれた最高のギフト』『ボブが教えてくれたこと』(ともに辰巳出版)を原作とした映画第2弾。

動物を家族に迎えたことのある人なら紹介文の"猫との友情物語"の文字だけで熱いものが込み上げてきそうですが、ペットとは無縁な人生を送ってきた人でも多くのことを学べる作品です。

 

元ホームレスの作家、ジェームズ・ボーエン

世界の1%の超富裕層によって、約40%超の富が独占されているとの指摘もあるほどに、経済的な格差の拡大は止まりません。貧しい者はさらに貧しく、富める者はさらに豊かになっていく。現代の残酷な資本主義の現実のなかで育まれた猫と人の友情を描いたものが、この『ボブという名の猫2 幸せのギフト』という作品かもしれません。

主人公は作家のジェームズ・ボーエン。猫のボブと一緒に出版社のクリスマスパーティーに出席する場面から物語が始まります。新作の締め切りに迫られ、パーティーを中座し抜け出したジェームズ。クリスマスを目前に、華やかな電飾と幸せそうな人々が行き交う夜のロンドンをボブとともに歩いていると、警備員と警察に取り囲まれたホームレスの青年・ベンと出会います。

ベンを助けて事情を聞くと、安全なはずのシェルターでは他の利用者から怪我を負わされ、その他にも行く当てがないという。うっすら涙ぐむベン。そんな彼にジェームズが語り始めたのは、自身が路上生活者として過ごした最後のクリスマスのこと。そこから物語の中心は数年前の冬、ジェームズとボブがともに歩んだ過去へと転換します…。

 

"大切に想う相手"にとっての幸せとは

"ジェームズはボブとともに路上に立ち、日銭を稼ぐ日々だったが、その姿を動物福祉担当職員に目を付けられる。ボブと引き離される不安の中、次々と窮地に見舞われ、ジェームズは最も困難で苦しい選択を迫られることになり..."(同作の公式サイトより)

どこから見てもジェームズとボブは相棒と呼ぶにふさわしい関係。互いが互いを必要として暮らしています。それは2人がすれ違ったり、離れ離れになりそうなとき、周囲の人が手を差し伸べてくれるほど。

この作品全体から受け取ったメッセージの一つは、「大切に想う誰かのために一歩引き下がることもまた愛」であること。目の前の大切な人のことを考えるあまり、つい先回りして世話を焼いてしまったり、いつもその人と繋がっていたいと思うがゆえに、強引に振り回してしまったり。家族、友人、恋人、あるいはペットに対して何かしら思い当たる節があるという人は多いのではないでしょうか。

物語ではジェームズや、他の登場人物が大切な人に対して抱く愛情についてみずみずしく描いています。このまま一緒にいることが相手にとって幸せなことなのだろうか。そんな問いかけが、鑑賞後の余韻として残る作品です。

 

前作に続き"ボブ本人"を演じたボブ

前作の「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」では、ボブの役をボブ自身が演じたことも大きな話題になりました。その名俳優っぷりに、今作でも出演オファーが。ボブに負担のないように十分なケアを行い複数の茶トラ猫との共演となりましたが、重要なシーンは主にボブ自身が演じているそう。ストーリーはもちろん、ボブの可愛らしく凛々しい姿を堪能できます。

2020年6月に虹の橋を渡ってしまったボブ。「ボブという名の猫2 幸せのギフト」はボブ出演の最後の作品として、私たちに大きなギフトを遺してくれました。

 

ボブという名の猫

 

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