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“小論文の神様”が教える「良い文章を書くため」の2つの鉄則

樋口裕一(多摩大学教授/白藍塾塾長)

2012年03月08日 公開 2024年12月16日 更新

“小論文の神様”が教える「良い文章を書くため」の2つの鉄則

文章を書くことが苦手。どのように書き出していいかわからない。文章のルールで悩んで、手が止まってしまう。なんて人も多いのではないでしょうか。

こうした書くことへの苦手意識は、きちんとした文章の書き方の基本ルールを身につけるだけで解消します。

見違えるほどわかりやすい文章がスラスラと書けるようになるための秘訣を10万枚近い文章を添削してきた「小論文の神様」樋口裕一氏が伝授します。

※本稿は、樋口裕一著『苦手な人もスラスラ書ける文章術』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

いきなり核心に入る勇気を持とう。

長々と前置きを書く人がいる。

手紙で時候の挨拶をするのならいい。だが、ビジネス文書で、本題に入る前に言い訳をしたり、みんなが知っていることの説明をしたり。なかには、上司や関連する人々に一人ひとり気を遣って、あれこれと言葉を並べたり、謙虚な表現をちりばめる人もいる。

これでは、読んでいるほうはたまらない。現代人にはそれほど悠長にしている時間はない。

 書くということは、ある特定の事柄を浮き彫りにすることだと理解する必要がある。

 ある日の出来事を書くのに、朝、目を覚まして、歯磨きして、食事をして、着替えて自宅を出るところから始める必要はない。

そんなことをしたら、いつまでたっても本題に入ることができず、むしろ焦点がぼけて、わかりにくい文章になってしまう。

どうしても前置きを書いてしまう人は、核心部分にいきなり入る勇気を持たないのだろう。少しずつ書きすすめるうちに、やっと勇気が出てきて、本題に入るのだろう。

そんな人は、まず、余計な前置きは必要ないということ、そうした前置きが、文章を冗長でわかりにくいものにしていることをしっかりと認識する必要がある。

謙虚な言葉を並べると、むしろ上司はいらいらして、その人への評価は下がる。ずばりと核心部分に入るほうが、上司はずっと喜ぶことを知るべきだ。なかには、どうやって核心部分に入ればよいのか、わからずにいる人もいるだろう。

自信がないから、あれこれと書いてしまうわけだ。だが、ほんの少し覚悟を決めさえすれば、初めから本題に入っていくことは、それほど難しいことではない。

まずは、もっとも大事なことを最初に書き、その後にそれを詳しく説明する形をとればよい。

たとえば、何かについての自分の意見を書くとき、最初に、「……について、私は~と考える」と示す。

そして、その後に、現在、問題になっていること、それについて自分が考えたことを加える。そうすれば、すっきりとまとめることができる。

自分の行動についての報告を書くとする。そのような場合には、最初に、「…に行って、~をした」と、まずメインになる行動を書く。そして、その後に、そのようにした経緯、その後の結果などを説明する。なお、このような書き方については、次の項で詳しく説明する。

<ルール> 余計な前置きはいっさい必要ない。

 

型を身につけよう。

構成をしっかりしてこそ、説得力のある文章が書ける。では、実際にどのような構成にすれば説得力のある文章になるのか。そこで、これから、具体的な構成法について述べていく。

まず、200字から400字程度の、比較的短めの文章で考えよう。この場合は、基本型Aと基本型Bという、2つの構成法を使うことができる。いずれも、第1部と第2部の2部構成の形になる。

・結論をまず提示する基本型 A

基本型Aとは、第1部で問題の事柄に対する自分の意見や結論を簡単に示し、第2部でその根拠や具体例などを詳しく説明する形だ。

たとえば、「○○の件について、私は現状のまま推進すべきだと考える。その理由は……」など。社外文書でも、最初に用件をずばり示して、用件の細かい内容などは後回しにするほうが読みやすいが、それも基本型Aの応用といえる。

この書き方の利点は、最初に自分の立場をはっきりさせることで、文章全体の方向性が明確になり、ポイントがぶれずにすむことだ。

それに、短い文章であればあるほど、読み手は結論を急ぐことが多い。とくに、社内の大勢に従う場合は、結論だけが重要なので、読み手の手間を省くためにもこの形のほうが好ましいだろう。

・少数意見に向く基本型 B

次に、基本型Bは、基本型Aの第1部と第2部を逆にした形だ。つまり、第1部で問題の事柄についての状況や具体例などを説明したうえで、第2部でそこから導かれる結論を述べるわけだ。

たとえば、「問題の件については、このような状況があり、このような問題点が考えられる。したがって、現状のまま推進するべきではない」など。この書き方は、とくに多数派とは異なる意見などを示すときに効果的だ。

ほかの人が気づいていない問題点や注意していない状況を材料として最初に提示して、そこで相手を圧倒したうえで、自然に結論に導く形にすれば、かなり説得力があるだろう。だが、それだけの材料がない場合、立場が暖昧なまま話をすすめると、短い文章でも読み手はいらいらする場合がある。

 したがって、一般的には、基本型Aを使うほうが書きやすいだろう。

 基本型A・Bの使い分けは、面接や会議などでの発言の機会においても応用できる。

 <ルール> まず、結論を提示する。

 

 樋口​裕一 
(ひぐち・ゆういち)  

作家、多摩大学経営情報学部教授

1951年、大分県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、立教大学大学院博士課程満期退学。「小論文の神様」と呼ばれる、大学入試小論文指導の第一人者。現在は小学生から社会人までを対象に、通信添削による作文、小論文の専門塾「白藍塾」を主宰する。多摩大学経営情報学部教授。
著書に『頭がいい人、悪い人の話し方』『本当に使える! 日本語練習ノート』(以上、PHP研究所)『親が教える! 小学生の作文上達法』(角川書店)『「教える技術」の鍛え方』(筑摩書房)など多数。

 

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