ソ連時代の強みを未だ持ち続けるロシア
このロシア経済の強みは、アメリカ経済の強みと似ている。
アメリカは、ヨーロッパの文明を持ちながら、潤沢な資源、肥沃な国土を持っていることが大きな強みだった。アメリカが19世紀から20世紀にかけて急成長し、世界経済の王者に君臨できたのも、これが大きい。
ほかのヨーロッパ諸国は、文明は進んでいたが、資源が乏しかったり、農地が狭かったりなどの弱みがあった。ヨーロッパ諸国が交易のために世界中に乗り出したのも、この弱みによるものだった。
特に石油が重要となった20世紀になるとそれが顕著だった。ヨーロッパでは石油がほとんど出ないために、石油を求めて世界各地に乗り出し、それが戦争の大きな要因ともなった。
そして、アメリカが二度の世界大戦の勝者になることができたのも、世界最大の石油産出国であることが大きな要因だったといえる。
ロシアも、このアメリカと同様の強みを持っているのだ。
東西冷戦が起きた要因の一つも「ソ連が資源大国だった」ということがある。
第二次世界大戦直後のヨーロッパ諸国は、国土が荒廃し、産業は極度に停滞していた。それはソ連も同様だった。
だからアメリカは、ヨーロッパ諸国に対して経済封鎖をしやすい状況にあったのである。つまり、アメリカが「経済援助や貿易をしない」と言えば、多くのヨーロッパ諸国は窮地に陥る。だから、どこもアメリカのいう事を聞かざるを得なかった。
しかし、ソ連だけはギリギリ、アメリカにノーを言うことができた。
ソ連の産業も相当に破壊されており、アメリカの支援は欲しかったし、アメリカとの経済交流がなくなれば大きなダメージを受ける。
だが、アメリカとの交易が途絶えれば、干上がるというほどではなかった。
ソ連は膨大な資源と広大な農地を持っている国だからだ。
そして東欧諸国はソ連からエネルギーや資源の供給を受け、ソ連は東欧の農産物を得ることで、共産主義圏内で、自給自足が可能だったのである。
つまり、ソ連を中心とする東欧諸国は、アメリカの経済制裁を受けてもやっていけたから、東西冷戦が可能となったのである。
このソ連時代の強みをロシアは今でも持ち続けているといえる。
ロシアは、アメリカから経済制裁を受けてもやっていける数少ない国なのである。もちろん経済制裁を受ければ、ダメージは受ける。しかし、日本をはじめとする世界の大半の国のように、アメリカから制裁を受ければたちまち国民生活に支障をきたすというほどではないのだ。
だからロシアは、アメリカに強くものを言うことができるのである。