「これは、ある家の間取り図です。あなたには、この家の異常さが分かるでしょうか――」
そんな不穏な問いかけからスタートする「【不動産ミステリー】変な家」というYouTube動画をご存知だろうか。
2020年10月末に投稿され、再生数はなんと1000万回超え。そして、動画の続きの物語を書いた書籍『変な家』は現在30万部突破のベストセラーとなっており、水面下では映画化も決定しているという。
この動画の投稿者であり、書籍版の作者は「雨穴(うけつ)」と名乗る謎の人物である。見た目は黒子のような全身黒づくめで、目と口に小さな穴があいた白いお面をつけ、声はボイスチェンジャーで変えているのか、女性ともとれるどこか可愛らしい声。
その不気味な容姿と声のギャップも相まって特に10代、20代の間でファンが急増中。ネット上では親しみを込めて「雨穴さん」と呼ばれている。
雨穴氏とはいったい何者なのか?その素顔に迫る初のロングインタビューに成功。本稿ではそのインタビューの一部を紹介する。
間取り図に記された「謎の空間」
「変な家」に出てくる間取り図
インタビューに入る前に、「変な家」のあらすじをざっとご紹介しておこう。
この物語の主人公・オカルト系フリーライターの雨穴は、人生初のマイホームを購入しようと検討している知人の柳岡さんから、ある相談を受けることから話は始まる。
間取り図をよくよく見てみると、1階のリビングと台所の間に用途不明な「謎の空間」があるのだ。
雨穴は、知り合いの設計士・栗原さんに間取り図を見てもらうと、この用途不明の空間だけではなく、この家には他にも「奇妙なポイントがたくさんある」と指摘を受ける。
2階のど真ん中に、まるで監禁部屋のような子供部屋が配置されている。
浴室とは別にシャワー室もある。
1階には必要がないはずの寝室まである。
これはいったい何なんだろうと。
栗原さんの推理では、この家は、周囲に悟られることなく殺人を遂行できる「殺し屋の仕事場」ではないかというのだ。
招いた客人を殺して、そして死体の処理まですることができる。それにはおそらく子供を利用していたのではないかと。
その推理と時を同じくして、この家の近くの雑木林で「左手首だけが切り落とされた死体が発見された」というニュースが報道される。
あの家は本当に、殺人のための装置であったのか。
近くの雑木林で見つかった死体との関連性は一体何なのか。
それは動画版では全く謎のまま終わってしまうのだが、書籍版では、雨穴のもとに届いた「あの家に心当たりがあります」という一通のメールから、オリジナルの展開が始まるのだ。
やがて第二、第三の間取り図が発見され、恐るべき真実へとたどり着いてしまう――。
そんな背筋がゾクゾクするようなストーリーを生み出した雨穴氏に、活動を始めたきっかけや自身が考える"恐怖"について、インタビューを通して教えてもらった。
雨穴は「関係のない漢字二文字」でつけた名前
――ユーチューバーになった理由とは?どういうきっかけで動画配信を始めたのでしょうか?
【雨穴】私はもともと「オモコロ」というメディアにウェブライターとして所属していました。「オモコロ」というのは、主にギャグ系記事を毎日配信しているウェブサイトなのですが、2019年からYouTubeでの活動(オモコロチャンネル)も並行して始めました。
私自身はオモコロチャンネルにほとんど関わってはいませんが、「オモコロがYouTubeをやるなら自分も始めよう」と思い、ユーチューバーになりました。
――「雨穴」という名前の由来は? 仮面と音声変換というスタイルをとったのは、どんな理由からですか?
【雨穴】私が憧れているウェブライター「夢顎んく」さん(通称「夢顎」)という方がいるのですが、その方が「まったく関係のない漢字二文字の組み合わせ」でペンネームをつけたと聞いたので、同じ方法で自分が好きな二つの言葉(雨+穴)をくっつけて作りました。
仮面と音声変換については、当初は「黒子」の格好でやろうと思っていたのですが、黒子の衣装は意外と構造が複雑で、特に顔の部分を自作するのは難しそうだったので、その代わりに全身黒タイツでお面をかぶろうと。
世界堂でたまたま見つけた「お面の型」をそのまま使っていますが、結果的に「カオナシ」のような格好になってしまいました。
声は地声でやるのが恥ずかしくて音声変換することにしました。
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「道端にでっかい魚が落ちていたら、怖いしちょっと面白い」