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哲学者・ロックの名著が説く「自由、民主主義の根幹」とは?

大賀康史(フライヤーCEO)

2022年07月27日 公開

哲学者・ロックの名著が説く「自由、民主主義の根幹」とは?

ビジネス書を中心に1冊10分で読める本の要約をお届けしているサービス「flier(フライヤー)」(https://www.flierinc.com/)。
こちらで紹介している本の中から、特にワンランク上のビジネスパーソンを目指す方に読んでほしい一冊を、CEOの大賀康史がチョイスします。

今回、紹介するのは『市民政府論』(ロック著、角田安正訳、光文社)。この本がビジネスパーソンにとってどう重要なのか。何を学ぶべきなのか。詳細に解説する。

 

ジョン・ロックの時代と自由主義の源流

市民政府論、ジョン・ロック

『市民政府論』は言うまでもなく、人権、自由主義の根幹を示した名著中の名著です。本のカバーに記された一節を紹介します。

「人は生まれながらにして生命・自由・財産を守る権利があり、国家の成立は、この人権を守るための人々の合意に基づく。ロックの唱えた人権、社会契約思想はのちのアメリカ独立宣言、フランス革命を支える理念となった。自由、民主主義を根源的に考えるうえで必読の書である。」

この説明の通り、本書から人権、自由主義、民主主義の起点がわかり、その後に発展する資本主義の土台になっているとも気づかされます。後世への影響の大きさから、本書は人類が残した第一級の書物とも言えます。

比較的コンパクトにまとめられている上、この年代の本としては珍しく論理の流れに沿って美しく構成されているので、きちんと向き合えば比較的読みやすい古典と言えるでしょう。

ジョン・ロックが生きた17世紀のイギリスは、名君と言われたエリザベス1世の治世を終え、「17世紀の全般的危機」と呼ばれる混乱期でした。欧州では30年戦争と呼ばれる宗教戦争が行われ、その他にも異常気象、飢饉、ペストの大流行がありました。王権は弱体化し、より優れた統治システムが求められる時期でもありました。

そのような時代に、著者は1つの答えを示したのです。その功績から、ジョン・ロックは自由主義の父とも呼ばれています。研究者ではない自分がこの本に触れるには勇気がいりますが、1人の読者として書くことをご容赦下さい。

 

政治社会の形成以前を表す「自然状態」とは

本書には政治社会の形成以前を表す自然状態という言葉がよく登場します。前提として、人は生まれながらに平等で、他人の生命、自由、財産等を奪ってはならないと考えられています。

ただ、いわゆる自然状態では、暴力が横行するため、それを処罰する本来的な法とその執行者が必要になると言います。

ドラえもんに登場するジャイアンのように、腕力によって「おまえのものはおれのもの、おれのものもおれのもの」という人が表れるのは、自然な成り行きと考えているのでしょう。

不正な暴力をするものは、ライオンのように残忍な野獣と変わらないと考えられ、処分することが許されます。個人として向き合うだけでは相手が自分に従うとは限りません。

そのため、暴力を取り締まる警察等の執行組織や立法組織が必要になってくると言います。人々は公益のため、共通の権力に身をゆだねるようになります。

ここまでは隙がなく論理展開されています。ただ、この執行組織等を誰が担うのかが、次の論点になります。

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生命、自由、財産の保全のための仕組み

著者紹介

フライヤー(flier)

ビジネス書の新刊や話題のベストセラー、名著の要約を1冊10分で読める形で提供しているサービスです。通勤時や休憩時間といったスキマ時間を有効活用し、効率良くビジネスのヒントやスキル、教養を身につけたいビジネスパーソンに利用されているほか、社員教育の一環として法人契約する企業も増えています。(https://www.flierinc.com/)

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