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哲学者・ロックの名著が説く「自由、民主主義の根幹」とは?

大賀康史(フライヤーCEO)

2022年07月27日 公開

 

生命、自由、財産の保全のための仕組み

立法権力と執行権力の両方が絶対君主にゆだねられた時代は西洋に限らず世界中で長く続きました。主に立法権力と執行権力をすべて独占し、庶民はその配下におさめ、絶対君主自身はその例外に置く、という構造です。

絶対君主は国家を統一する過程で、突出したリーダーシップを発揮し人民をまとめ上げるため、多くの人はその統治に従います。

ところがその君主ですら、その後個人的な利益や欲求のために判断がぶれていくことが歴史上で繰り返されています。さらにその子孫に地位を引き継ぐ際には、人民の意思とは離れた権利承継が行われます。

しだいに人々の利益の最大化ではなく、王室や君主自身の利益の最大化のために判断をするようになり、権力は腐敗していきます。したがって、絶対君主にすべてをゆだねるのではなく、立法権力と統治権力を分け、公益のためにそれらを個別に行使する仕組みが求められるのです。

1代で見ると絶対君主の仕組みが勝ることがあっても、長い目で見れば今の民主制度の方が優れているように感じます。ほとんどの民主主義国家では権力の移動が制度として組み込まれているため、個人の特性による長期的な腐敗がおきにくいと言えそうです。

 

人の弱さを前提に制度を考えることの大切さ

環境は常に変わり続け、適応した動き方も変わるものなので、絶対的な個というものは人には望めず、ましてやその子孫には望めないでしょう。さらにどんな人にも個人としての幸せを追求する習性があるため、いつまでも公益に仕える偉人の存在を前提にすることは現実的ではありません。

したがって、絶対君主という制度にはもともと脆さがあります。神のような個人に依存しない制度設計が求められるのです。

民主主義では多数決により主な事項を決定します。ただ、多数決による弊害も生じます。マイノリティへの差別的行動や、大衆迎合的な政策の採用などです。

多数決にも課題はありますが、とはいえ絶対君主制に戻すことが正解ではなく、民主主義の理想を出発点としたより成熟した統治形態を目指すべきだとも考えられます。

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著者紹介

フライヤー(flier)

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